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【アメリカ】 トランプ大統領、「キーストーンXLパイプライン建設計画」を承認する大統領令に署名

 米トランプ大統領は3月24日、カナダのエネルギー大手トランスカナダによる長距離石油パイプライン「キーストーンXLパイプライン建設プロジェクト」を承認する大統領令に署名した。トランプ大統領は署名式の場で「米国エネルギー政策が新たな時代に入った」と述べた。同パイプライン建設プロジェクトでは、環境団体や米国先住民活動家からの反対を受け、前オバマ大統領は2012年1月から一貫してプロジェクト承認依頼の却下をしていた。

 問題となっている「キーストーンXLパイプライン建設プロジェクト」とは、より巨大な計画である「キーストーンパイプライン建設プロジェクト」の第4計画区間プロジェクトの通称。名称に入っている「XL」とは、「Export Limited(輸出特急)」の意味。「キーストーンパイプライン建設プロジェクト」は、カナダ・アルバート州のオイルサンドから採掘された石油が集積する同州Hardistyから、米国テキサス州の石油輸出港ポート・アーサーや同州ヒューストンの石油化学コンビナートまでを総長4,500km以上のパイプラインで結ぶ壮大な計画。2005年に計画開始、2007年にはカナダ連邦政府が、2009年には米国政府が第1計画区間から第3計画区間までの計画を承認した。事業主はトランスカナダ1社。2008年には米コノコフィリップスが権益50%を獲得し参画したが、わずか1年半後にトランスカナダがコノコフィリップスの全権益を買い取り、トランスカナダが権益100%を保有している。



(出所)Wikipedia

 「キーストーンパイプライン建設プロジェクト」のうち第1計画区間から第3計画区間まではすでに完成している。第1計画区間は、Hardistyからカナダと米国の国境を越え、米国Steele Cityを経由し、米イリノイ州Wood Riverの石油化学コンビナートや同州Pakotaの石油タンク集積地までを結ぶもので2010年6月に完成。第2計画区間は、米国Steele Cityから米国オクラホマ州の石油タンク集積地クッシングまでを結び2011年2月に完成。第3計画区間は、米クッシングからテキサス州ポート・アーサーの石油輸出港までを結び2014年1月に完成。また第3計画区間の支線で、テキサス州内で分岐し同州ヒューストンの石油化学コンビナートまで結ぶ76km区間は2017年中に完成する見込み。

 一方、懸案となっている第4計画区間の「キーストーンXLパイプライン建設プロジェクト」は、第1計画区間の始点と同じカナダHardistyから東南方向に直進し、米モンタナ州の軽質油(Light crude)産地ベーカーを経由し、第2計画区間の始点Steele Cityまでを結ぶ総長1,897kmの区間。第1計画区間に比べ距離が短いため「Export Limited(輸出特急)」という名称が付けられた。カナダ政府は、同プロジェクトを2010年3月に承認。一方、米国環境保護庁(EPA)は、米国国務省(米加国境を跨ぐプロジェクトのため国務省が管轄)が実施した環境影響調査が不十分であると指摘し、国務省も2011年11月、希少動植物の生息地であるネブラスカ州サンドヒルズや米国の貴重な水源であるオガララ帯水層を跨ぐルート選定に難色を示し、トランスカナダに対しルートの再検討を指示した。その後トランスカナダはルートの再検討に同意したものの、2012年1月オバマ大統領が同プロジェクトを許可しない方針を表明し、プロジェクトそのものの再検討を求めた。

 その後、同プロジェクトは米連邦政府の大きな政治論争を巻き起こしていく。2012年5月にはトランスカナダが国務省に対しプロジェクト案を再度提出し、2013年3月には国務省も環境影響調査の中で問題なしとの判断を下したが、ホワイトハウスの意向もあり翌2014年1月に「問題なし」とした判断を撤回。今度はネブラスカ州最高裁判所で、同パイプライン敷設ルートの承認を巡る裁判において、裁判官7名に対し承認却下判決に必要な裁判官3分の2の賛成5名に満たない4名の賛成しか得られず、「キーストーンXLパイプライン建設プロジェクト」原案のまま承認する判決を言明。同じく米国連邦議会でも同プロジェクトの承認権限をオバマ大統領から取り上げる法案を、下院270対152の賛成多数で、上院62対36で法案成立に実質必要な60票以上を獲得し法案は議会を通過した。しかし、オバマ大統領は対決姿勢を貫き、連邦議会を通過した法案に対する署名を拒否し、同法案は廃案となった。それに対し連邦上院は、大統領の拒否権発動を覆すのに必要な法案の再審議を行ったが、採決には3分の2の賛成が必要なのに対し、賛成62、反対37となり、採決できなかった。そして同年11月にオバマ大統領は、国務省が同プロジェクトを最終的に否認したことを発表し、この判断を支持することも示した。

 トランプ大統領は、今回のプロジェクト承認について、パイプライン建設によりエネルギー価格と外国への原油依存の低下に加え、28,000人の雇用創出が可能になると主張した。しかし、2014年に米国務省が実施した調査によると、プロジェクトに必要な雇用は建設関連が3,900人、永続的雇用はわずか35人としており、トランプ大統領の数字の裏付けに疑問を呈す声も上がっている。

【参考】【エネルギー】石油産業の構造② ー原油価格と産油コストの世界ー(2016年2月10日)

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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