UL認証で知られる米認証機関UL(Underwriters Laboratories)は3月13日、環境認証を行う部門UL Environmentが、動物実験を行わずにEUの化学物質ルール「REACH規則」に基づく有害性試験が可能となる新たなソフトウェア「REACHAcross」をリリースした。同種のソフトウェアとしては初めて、人工知能型アルゴリズムの一つ「機械学習」機能を搭載した。
REACHAcrossには、精度の高い類推(Read-across)を用いた定量的構造活性相関(QSTR)に基づく分析ができることが大きな特徴。通常、新規開発された化学物質をREACH規則のもとで有害性や安全性を試験する際には、動物実験を行い致死量やダメージ量などの計測を行うことが多い。そのため、実験に用いられた動物が死に至ることも多く、動物実験の削減の必要性が指摘されていた。定量的構造活性相関法では、化学物質の構造から薬効を予測し、従来動物実験によって得られた有害反応ポイント「エンドポイント」の反応を推定することができる。またRead-across法を用いることで、過去に試験をしていない化学物質も、試験データのある類似物質から有害性を推察できる。
さらに機械学習機能が搭載されたことで、定量的構造活性相関による推定が今後自動的に強化されていく。初期時点では、約50万の化合物の有害性関連データが登録されており、何十億という化合物の組み合わせの分析が可能。今後システムにデータが登録されていくにつれ、機械学習により自動的にシステムが学習し、さらにより多くの分析が行えるようになる。これにより、これにより、皮膚感作性、急性経口毒性、急性眼刺激性、急性皮膚刺激性、急性皮膚毒性、変異原性などのエンドポイント反応が推察できるようになる。
同ソフトウェアは、REACH規則の2018年登録を行う企業を主なターゲットとしている。この登録制度では、企業がEU内で製造または輸入する対象化学物質を毎年登録することが義務付けられている。動物実験の必要性がなくなることで、企業は動物保護という倫理的命題から解放されるだけでなく、試験時間の短縮、コスト削減も実現できるという。今後は、米国環境保護庁(EPA)の「有害物質規制法(TSCA)」や、韓国、台湾、中国などの化学物質規制ルールにも対応できるようにしていく予定。
REACHAcrossは、毒性試験の動物実験代替法の世界的権威であるジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生スクールのThomas Hartung教授(エビデンスベイスド毒性学)と同教授の研究室の博士課程学生、ULの科学者が共同で開発した。
【参照ページ】UL Environment Introduces Ground-Breaking Software to Reduce the Need for Animal Testing and Comply with REACH
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