EUで下院の役割を担う欧州議会は3月14日、本会議を開催し、「EU株主権利指令(SRD)」を改正し、株主の権利を強化する法案を賛成464、反対39、棄権13の賛成多数で可決した。法案は今後、上院の役割を担うEU理事会での審議に移る。EU理事会で可決されると法案は成立する。
本法案のポイントは2つ。まず、「SAY ON PAY」の法制化。「SAY ON PAY」は、企業の役員報酬(PAY)に対して株主が是非を判断する(SAY)という制度。EUでは、2004年から加盟各国に「SAY ON PAY」の法制化を推奨し、2009年にはとりわけ機関投資家に対して役員報酬議案に対する議決権行使を推奨してきた。今回のEU指令改正では、ついにEUとして「SAY ON PAY」を法制化し、加盟各国に対して法整備を義務化するものとなる。米国では、2010年7月に制定された「ドッド=フランク・ウォール街改革及び消費者保護法」によって「SAY ON PAY」が法制化されており、今回EUもこれに並ぶことになる。また、同時に、企業が自社株の株主を容易に探索することを可能にする内容も盛り込まれており、これにより企業と株主の間でのダイアログを活発化させる。
もう一つのポイントは、株主エンゲージメントの法制化。法案が成立すると、年金基金や生命保険会社、運用会社などの機関投資家は、株主エンゲージメントを投資戦略に統合させる方法を示したポリシーを策定し開示する「Comply or Explain」型の義務を負うことになる。ポリシーの策定及び開示を行わない機関投資家は、なぜ実施しないのかを説明しなければならない。また、議決権行使助言会社も、助言を行うに際し活用した情報の情報源や分析手法を公開する義務を負う。
EU指令は、EU加盟各国に対して法整備を義務化する内容のEU法。本EU指令改正案では、成立後、加盟各国は法整備準備期間として2年間の猶予が与えられる。
[2018年7月8日追記]
同EU指令は、2017年5月17日にEU理事会でも可決、成立した。2017年6月10日に施行。SAY ON PAYに関する規定は2018年6月10に発効。企業が真の株主を知る権利等、企業と株主の対話を促進する規定は2018年9月10日までにEU加盟国政府は国内法を整備しなけれなばならない。
【参照ページ】Stronger rights for shareholders in EU companies
【参照ページ】Shareholder Rights Directive: what is new?
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