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【日本】経済産業省、二酸化炭素排出ゼロの水素エネルギー検討についての報告書を発表

 経済産業省は3月7日、将来的な水素エネルギー利活用拡大のための方向性を示した「CO2フリー水素ワーキンググループ報告書」を発表した。環境に優しいイメージのある水素エネルギーだが、現在水素製造のために原料には石油や天然ガスなどの化石燃料が使われている。今回の報告書では、気候変動対策という国際的目標のため、二酸化炭素排出をしない水素エネルギー生成について具体的な道筋が提言された。

 経済産業省は、世界的に水素エネルギーが利活用されるようになるという将来像を描き、そのための具体的なステップとして「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を掲げている。2016年3月に改訂された「水素・燃料電池戦略ロードマップ」では、最終的に目指すべき姿(フェーズ3)として二酸化炭素排出量が少ない水素供給構造を実現すると設定。今回の報告書では、従来の燃料源である石油や天然ガスではない、新たな水素エネルギー源の開発について、進むべき技術的道筋を定めた。フェーズ3は2040年頃に実現する姿として描かれている。

 まず、新たな水素エネルギー源として、再生可能エネルギーにより発電された電力を用いる。とりわけ目下、電気を水素に変換して、貯蔵、利用する「Power-to-gas技術」が注目されており、これを安価で実現できれば、化石燃料を用いず電気だけで水素が生成できるようになる。再生可能エネルギーは現在、送電線や変電所の空き容量や調整力が不足していることによる発電抑制という「余剰電力」と呼ばれる問題が生じており、「Power-to-gas技術」を用いれば、余剰電力により未利用となっている発電容量を活かすことができ、再生可能エネルギー発電の効率化にも繋がると同時に、従来型の送電ネットワークの出力安定化にも役立つ。「Power-to-gas技術」の実現に向けては、水電解装置がカギだとし、現在有効とされる手法にはアルカリ水電解と固体高分子形水電解(PEM)が、また研究中の手法には高温水蒸気電解(SOEC)があると紹介している。

 続いて、2つ目の新たな水素エネルギー現としては、海外で未利用の化石燃料である褐炭や、油田やガス田で漏出している未利用ガスを活用していく道筋を示した。こちらについては、化石燃料を水素エネルギー源とするため、低炭素への取組として炭素回収・貯蔵(CCS)技術を活用していくとした。しかし、褐炭は通常の石炭よりも環境負荷が高く、褐炭や未利用ガスに依存した水素エネルギーという考え方が国際的に受け入れられるかどうかは大きな課題となりそうだ。

 報告書では、水素エネルギー源の化石燃料代替だけでなく、水素エネルギー輸送時の低炭素化についても考え方をまとめた。輸送時の水素形態としては、液化水素や有機ハイドライド、圧縮水素と呼ばれる物質が現在開発されているが、これらの分野でエネルギー消費量を削減させる新たな技術開発の必要性を指摘。さらに運搬経路についてはパイプラインを使うことでエネルギーロスが少なくできるとした。しかしパイプラインの建設については、ガスや石油のパイプラインと同様、漏洩や建設による環境負荷の面もあるため、こちらでも新たな検討課題が生まれてくることになるだろう。

 最後に、検討会の名称となっていた「CO2フリー水素」については、ライフサイクル全体で二酸化炭素排出量を完全にゼロにすることはそもそも極めて難しいことから、「CO2フリー水素」の名称の定義や、ライフサイクルアセスメントを実施する際のカットオフ条件などの整備が必要だとした。

【参照ページ】「CO2フリー水素ワーキンググループ報告書」を取りまとめました

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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