統合報告の国際フレームワーク策定NGOのIIRC(国際統合報告評議会)は2月23日、人件費を単なる費用ではなく長期的な機会やリスクとして捉えることを推奨するとするコラムを発表した。統合報告が要求する統合思考の中で、人的資源の価値を正しく認識することの重要性を訴えた。
IIRCでは、人件費を財務資本を蝕む費用と見なし、徒に削減しようとする近年の企業動向に警鐘をならしている。コラムでは、人件費を単なる費用とみなすことに対して、2つの落とし穴を生むと指摘した。一つ目は、全ての人件費は、長期的価値を持たない、短期的な費用だとみなす思考。そしてもう一つは、一つ目の落とし穴の結果として、人材や組織に起因する価値を対外的に広報していくことに失敗してしまうことだ。とりわけ、「知識産業」に属する企業にとっては、人材が生み出す価値は、事業活動を継続する上で不可欠な非常に重要(マテリアル)な要素であるにもかかわらず、人材をマテリアルなもの、または重大な機会やリスクだと捉えている企業は多くない。
人的資本を重視する企業は、財務状況が良いだけでなく、良好な顧客との関係性や高度なイノベーション、安全性の向上など他の側面の結果も向上すると指摘している研究もあることに言及。統合思考の中で、人的資本を適切に捉えられているかをチェックする上では、2つの自問が役に立つという。まずは、人的資本がどの程度事業活動の中核に関わっているか?というもの。人的資本の測定においては、従業員一人当たりの研修時間や博士号保有者の数などではなく、事業そのものに影響を与える人的資本の価値の側面で測定することが重要だとした。例えば、コラムでは例としてOMNIDEXという評価システムを挙げ、この指標ではアウトプット、費用、売上、質の4つの視点から企業の組織力を格付していることを紹介している。
もう一つの自問は、経営戦略やアクションが人的資本の維持、向上に結びついているかという点。コラムでは、著書「7つの習慣」で有名なスティーブン・R・コヴィー氏が提唱する「心の貯金」の概念を紹介し、人間関係のプラスの作用によって心の貯金は増える一方、苦しいときには心の貯金は減少していくため、つねに心の貯金がプラスとなるよう人間関係の円滑化や向上を図らなければならないと説明した。統合思考においては、経営戦略が心の貯金を増やすものとなっているか、減らすものとなっているかを意識すべきだとした。
【参照ページ】Materiality and Human Capital
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