シンガポールのヘン・スイキャット財相は2月20日、国会での2017年度予算案報告の中で、2019年から炭素税を導入する計画を明らかにした。炭素税は、発電所や化学メーカーなど大規模排出者である企業を対象に課税される予定。シンガポールには多くの化学メーカーが立地しており、シンガポールは同国の二酸化炭素排出量削減目標である2030年までに2005年比36%削減のため、産業界に対して排出量削減圧力をかける考えだ。
シンガポールは1960年代に税優遇制度を設け、欧米や日本の石油関連企業の誘致に成功しており、各製油所合計で1日あたり150万バレルの原油処理能力を持つ。炭素税は、温室効果ガス排出量1t当たり10シンガポールドル(約800円)から20シンガポールドル(約1,600円)の見込み。政府は、炭素税課税により製油所運営費用は1バレル当たり5シンガポールドル(約400円)から10シンガポールドル(約800円)上昇すると見立てている。
財相の発表によると、年間25,000t以上の温室効果ガスを排出している企業が課税対象となる。これによりシンガポールに拠点を置く40社が対象となると見られている。シンガポールの石油関連産業は、中国企業との激しい価格競争にさらされているが、今回シンガポール政府は、産業政策よりも気候変動対策を最優先する構えだ。炭素税計画についてのパブリックコメントの募集は3月に実施する。
さらにヘン財相は、気候変動対策として、自動車分野の新たな税制についても明らかにした。まず、ディーゼル税の仕組みを改める。従来のディーゼル税は、ディーゼル車の購入時に一括課税されていたが、ディーゼル燃料購入時の重量課税方式に変える。税額はディーゼル1リットル当たり0.1シンガポールドル(約8円)で、自動車ディーゼル、工業ディーゼル、バイオディーゼル燃料のディーゼル分など全てが対象。2月20日から即日発効した。従来のディーゼル車両税は同時に廃止される。車両税から燃料税に改めることで、ディーゼル車所持者に消費量削減インセンティブを与える。
また2013年に導入された、自動車の温室効果ガス排出量の少なさに応じ自動車税を払い戻す「排ガス量に基づく車両計画(CEVS)」を2017年12月31日まで延長するとともに、2018年1月1日からはさらに温室効果ガス排出物質として4物質を追加する新制度「車両排出計画(VES)」に切り替える。
同じく2013年に導入された、旧式ディーゼル商用車保有者の新型車両への買い換え時に登録料の割引や車両購入件(COE)の入札免除などの特典が受けられる制度「Early Turnover Scheme(ETS)」の適用期限が2017年7月31日に切れるが、EU基準のユーロ2及びユーロ3車両からユーロ4車両に切り替える保有者に対しては適用を2019年7月31日まで2年間延長する。これにより27,000台が適用延長対象となる見込みだ。
【参考ページ】Singapore Budget 2017: 6 things to know about the new carbon tax, tweaked vehicle emissions schemes
【参考ページ】Singapore carbon tax set to squeeze oil groups
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