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【EU】欧州議会、EU域内排出権取引制度の改革案を賛成多数で可決。毎年の排出枠減少幅を拡大

 EUで立法府下院の役割を担う欧州議会は2月15日、第4期となる2021年以降のEU域内排出量取引制度(EU-ETS)における修正案を379対263の賛成多数で可決した。現在、EU-ETSは、取引される排出権価格が想定より大幅に安価になってしまっており、排出量抑制のインセンティブとして有効に機能しなくなってしまっている。修正案は、2030年までのEUの温室効果ガス排出削減目標を達成するため、新たな制度を規定した。今後、EU上院の役割を果たすEU理事会での審議に移る。

 EU-ETSの仕組みは、キャップ・アンド・トレード制度型で、大企業を対象に一定の排出権を割り当て、その基準より削減を達成できた企業は排出権を市場で販売することができるとともに、超過した企業は市場から排出権を購入する義務を負っている。しかし、2008年の世界金融危機以降の欧州経済の低迷により企業の排出量が減少し、排出権売却が増加したため、排出権価格が下落した。EU-ETSは設立当初見込みでは、排出権価格を20ユーロから35ユーロぐらいとする予定だったが、市場メカニズムに委ねた結果現状では5ユーロ程度となっている。

 今回の修正案では、企業に付与する排出枠の毎年減少幅を、現状の1.74%から2.2%に拡大する。毎年の減少は、少なくとも2024年までは続ける。また、市場価格を操作・安定させるためのEU当局による市場介入策では、EU-ETSでの「中央銀行」に似た役割を果たす「市場安定化基金(MRS)」の買オペ超過上限量を、2019年から2倍に引き上げ年間24%とする。さらに2021年にはMRSが市場介入で積み立てた排出権引当量を8億t打ち消し、排出権価格の高位安定を図る。

 また、EU-ETSでは、鉄鋼産業、化学産業、エネルギー産業など二酸化炭素排出量の多い企業が、EUの環境規制を忌避しEU域外に移転してしまう「カーボンリーケージ」問題に対応するために、部門横断的補正係数(CSCF)制度を設けており、排出枠の企業への無償割当量を業界ごとに調整できるようになっている。無償割当量以外部分については、オークション形式で入札獲得しなければなない。修正案では、産業界からの要望に応え、最大5%まで無償割当方式での排出権付与を可能とする内容も盛り込まれた。鉄鋼、非鉄金属、化学メーカーからはこの措置への歓迎の声が上がるとともに、さらなる負荷削減を要望している。セメント業界は2021年から無償割当が廃止され全量オークション方式での割当に移行する予定であったが、修正案では見送られた。造船業も2023年からEU-ETS対象となる内容も入っているが、EU理事会で可決できるかは不透明の模様。

(追記:2017年3月2日)
 EU理事会は2月28日、欧州議会が採択した修正案に対し、EU理事会として前向きに検討する態度を示す「一般的アプローチ(General Approach)」を承認した。EU法の制定では、上院の役割を果たすEU理事会と、下院の役割を果たす欧州議会の双方で採択される必要がある。EU理事会に修正案が提出されると、EU理事会と欧州議会での正式な採択プロセスが開始され、双方の交渉の過程で最終的な法案が確定する。EU理事会は、審議を始める前に法案に大筋賛成する際に「一般的アプローチ」を承認し、欧州議会に対して審議を平滑に進めるという意思を示す。今回EU理事会が「一般的アプローチ」を承認したことで、EU-ETS改革案の成立見通しが非常に高くなった。

【参考ページ】European Parliament adopts draft reform of carbon market post-2020
【参考ページ】European Parliament Adopts Draft Reform of Carbon Market Post-2020
【参照ページ】Revision of the emissions trading system: Council agrees its position
【参照ページ】The decision-making process in the Council

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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