最新の統計調査によると、大気汚染を原因とする国別死亡者数で、インドがついに中国を上回り、世界最悪の大気汚染国家となったことがわかった。中国では、政府の大規模規制強化により、大気汚染問題での改善が見られてきているが、インドでは大気汚染がますます深刻化している。中国が2013年に調査したデータでは、大気汚染の一因であるPM2.5の主要排出源について多い順に、原料炭(製鉄等)、交通、家庭等での木材などの燃焼、非石炭鉱物、一般炭(石炭火力発電)が挙げられており、インドでも同様の対策が急務となってきている。
今回の報告は、ボストンの健康影響研究所(HEI)とシアトルの医療統計評価機関(IHME)が共同で行い、2月14日発表した。両機関は、政府等の公共機関が実施している各国の大気汚染や健康被害統計を収集しつつ、統計未実施国については衛生データを活用し、世界的な統計分析を行っている。健康被害については、PM2.5を原因とする疾患による死亡者数と、排気ガス等から生成されるオゾンを原因とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡者数が対象となっている。
(出所)State Of Global Air 2017
PM2.5被害からの死亡者数は、中国は2000年からほぼ横ばいで推移しているものの、インドは1990年から年々急増しており、2015年数値では中国と近接してきてしまっている。これに対し、EU加盟国全体での死亡者数は中国やインドの4分の1、日本は15分の1程度。先進国では非常に数が減少または低レベルに留まっているのに対し、インドや中国では著しい健康被害をもたらしていることがわかる。世界の主な死因統計においても、PMは、高血圧、喫煙、糖尿病など空腹時高血糖、高コレステロールに次いで第5位となっている。
(出所)State Of Global Air 2017
慢性閉塞性肺疾患による死亡者数では、インドは2010年に中国を抜いてしまった。上記のPM2.5系疾患と慢性閉塞性肺疾患による死亡者数を足すと、これまで世界ワーストであった中国の118万人に対し、インドは119.8万人。インドが中国を超え、世界最悪となった。
同報告書では、同様に南アジアの人口大国であるバングラデシュやパキスタンでも大気汚染が深刻化してきている事実を伝えている。サウジアラビアやエジプトなど中東諸国でも大気汚染はひどくなってきている。
これまで日本では大気汚染については中国の状況ばかりが伝わってきているが、事態は南アジアや中東で、より悪化してきている。
【報告書】State Of Global Air 2017
【プロジェクト】State Of Global Air
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