インドで環境関連事件を管轄する裁判所「国家グリーン審判所(National Green Tribunal)」が出した使い捨てビニール袋やプラスチック製容器の全面使用禁止判決が、2017年1月1日から首都デリー市とデリー首都圏(National Capital Region)で発効した。インドではプラスチックゴミ問題が海洋汚染や廃棄物放置、焼却による大気汚染などの大きな問題となっており、裁判所によってプラスチック容器やビニール袋の使用が禁止されるという新しい動きとなった。
国家グリーン審判所は、インドに置かれている特別な裁判所で、2010年に制定された「国家グリーン裁判法」に基づき設置された。国家グリーン審判所は、環境問題を広く管轄することができ、同裁判所が出す判決は民事裁判所と同等の法的拘束力を持つ。さらに、国家グリーン審判所は、民法を法源とせず、「自然的正義(Natural Justice)」に基づき判決を下すが定められた一種の超法規的権限を有している。同裁判所は、デリーに本部、他主要都市4ヶ所に支部を置き、さらに農村部からのアプローチしやすくするため巡回裁判所が4部置かれている。インドでは、プラスチック製品の使用を禁止する法令は存在しないが、国家グリーン審判所は、プラスチック容器等の使用禁止を求める訴訟に対し、デリー周辺3ヶ所にある廃棄物火力発電所での焼却による大気汚染が深刻であるとして超法規的にプラスチック容器等の全面禁止を定める判決を2016年12月2日に下していた。国家グリーン裁判法は、国家グリーン審判所の判決に不服の場合は、最高裁判所に控訴できるとしている。
判決では同時に、デリー市政府に対して、積み上げられている廃棄物の削減を命じた。一方、問題となっている廃棄物火力発電所に対しては、国家グリーン審判所の判決に従う形での運転続行を容認した。
国家グリーン審判所が下した判決は、超法規的なものだが、インド中央政府の意向にはある程度沿うものとなっている。インド中央政府は2012年10月に、環境破壊の原因となっているビニール袋の製造、輸入、輸送、保管、販売を全て禁止する方針を発表したが、ビニール袋製造企業は高等裁判所に違法だと提訴し、その後裁判が膠着して進展しない状態が続いていた。中央政府は2015年に高裁に対し裁判を進めるよう声明を出したが、今もまだ裁判が進行しない状態となっている。
一方、今回の判決を機に、社会の混乱も見られる。国家グリーン審判所は、超法規的に使用全面禁止を命じたが、行政当局内でそれを執行するための手法や手続きがまだ確立できていない。また、科学者や製造メーカーからは、プラスチック容器等の一部使用継続を求める声が上がっている。
【参照ページ】NGT bans use of ‘disposable plastic’ in Delhi-NCR from January 1
【参照ページ】Plea against plastic bags with NGT
【機関サイト】NGT
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