国連責任投資原則(PRI)は1月16日、シェールオイル採掘やシェールガス採掘に用いられる水圧破壊について、投資が水圧破砕がもたらすリスクを適切に理解し、関与する投資先企業に適切にエンゲージメントするよう促すガイダンス「Engaging with oil and gas companies on fracking: an investor guide」を発表した。PRIは、シェールオイルやシェールガスが新たなエネルギー源として勃興している中、投資家が投資先企業に働きかけることで、水圧破砕がもたらすリスクを最小化することが重要だとしている。
PRIは、ガイダンスの中で、水圧破砕がもたらすリスクとして、「操業・物理的リスク」「メタン及び他の温室効果ガス漏洩リスク」「評判リスクと操業のための『社会的ライセンス』」「政策・規制リスク」の4つを挙げた。
(1)操業・物理的リスク
水圧破砕は、大量の水を継続的に消費するため、水希少性が高い地域では操業が困難になっていく。また、利用後の汚染水を輸送、貯蔵、廃棄する際に採掘坑や地表面から汚染水が漏出するリスクもある。
(出所)SCIENTIFIC AMERICAN
(2)メタン及び他の温室効果ガス漏洩リスク
採掘に派生して発生するメタンガスや他の温室効果ガスが気候変動の原因となる。そのため、天然ガスは石炭より環境に優しいという位置づけを損なうものとなる。現行ではメタンガスは空気排出されたり燃焼処理されりしているが、今後は回収が義務付けられるようになるとコスト増加要因となる。また、メタンガス排出量を削減する規制が定められるとコスト要因となる。
(3)評判リスクと操業のための『社会的ライセンス』
水圧破砕に関してはメディア上で報道されており、地域社会が懸念を有している。関与企業が地域社会の懸念に対し、適切に対応し、管理できるかどうか
はリスク要因となる。
(4)政策・規制リスク
オバマ政権時代には、石油ガス産業からのメタンガス排出量を2012年比40%から45%削減することが、米国・カナダ・メキシコ首脳の間で合意された。今後、引水量規制、環境規制、排水規制などが定められていく可能性もある。すでに、英国スコットランドやオーストラリア・ビクトリア州では水圧破砕そのものを禁止する措置がとられている。
その上で、PRI水圧破砕運営委員会は、投資家が積極的にエンゲージメントを行うべき分野として、「ガバナンス」「水利用と水質」「温室効果ガスや他の排出物質」「コミュニティへの影響と同意」の4つを提示した。ガバナンスでは、投資先企業に対しリスクを最小化するためのBAT(利用可能な最良の技術)を投資、実装するという意思が確認できるかという点。その他の3つの分野では、それぞれリスクを最小化するための適切なポリシー、コミットメント、情報開示がなされているかをチェックし、それらがなされていない場合はエンゲージメントを行い働きかけるべきだとした。
PRIに署名する機関投資家のうち41機関(運用資産総額5兆1,000億米ドル)はすでに、水圧破砕に関与する37社に対し協同エンゲージメントを行い、改善を促している。PRIは、今回のガイダンスを通じて、その他の署名機関にもエンゲージメントを促していきたい考えだ。
【参照ページ】New guidance helps investors engage with oil and gas companies on fracking
【ガイダンス】Engaging with oil and gas companies on fracking: an investor guide
【ガイダンス(簡易版)】ENGAGING ON FRACKING
【参考ページ】Water Use Rises as Fracking Expands
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