米証券取引委員会(SEC)のマイケル・ピウワー委員長代行は1月31日、ドッド・フランク法第1502条で定める「紛争鉱物ルール」を見直しを検討するという声明を発表した。今後、証券取引委員会で、法律や同委員会が発行してきたガイドラインを見直し、必要に応じて法改正することも視野に入れる。証券取引委員会は、同時に3月17日まで45日間のパブリックコメントの受付期間を設け、広く一般からも意見を募る。一方で、今回の声明の中では、再検討期間中は現行ルールは継続されるとし、企業は2017年中も紛争鉱物の調査及び説明義務がある言明した。
【参考】紛争鉱物規制/OECD紛争鉱物ガイダンス・ドッドフランク法・CMRT・CFSI(2014年8月1日)
ドッド・フランク法で定める「紛争鉱物ルール」は2010年に制定されて以来、執行面でかねてから暗雲が立ち込めていた。紛争鉱物ルールでは、企業に対して自社製品に紛争鉱物が含まれているかを調査する義務を課し、調査内容の簡潔な説明と結果を証券取引委員会に報告するとともに自社HP上で開示することも義務化した。さらに、製品に「コンフリクト・フリー」「コンフリクト・フリーとは判定されなかった」「コンフリクト・フリーか否か判定不能」のいずれかを製品を記載することも義務付けた。しかし、証券取引委員会への初回報告期限であった2014年5月末の直前の4月に、コロンビア特別区(ワシントンD.C.)連邦巡回区控訴裁判所は「コンフリクト・フリーとは判定されなかった」との記載義務が、米国憲法修正第1条が保障する「言論の自由」に違反しているとの判決を下したのだ。一方、それ以外の調査義務、報告義務などは正当とした。この判決を受け、紛争鉱物ルールそのものに反対する産業界等は、紛争鉱物ルールそのものの廃止も裁判所に要求したが、その訴えはすでに棄却されている。
マイケル・ピウワー委員長代行は、紛争鉱物ルール見直しの背景について、アフリカ産鉱物全体の不買運動など法律が意図しない結果を生んでいることや、義務化されたデューデリジェンスの実施や情報開示が企業コストを生じさせていること、法律が意図するコンゴ民主共和国での武装集団勢力の減退という効果を得られているのか疑いあることなどを挙げた。関係者の間では、トランプ大統領が、ドッド・フランク法の他の規定が定める金融規制を緩和する方針を示しており、それに引きづられる形で紛争鉱物ルールの有効性についてもチェックが入ることとなったのではないかという話も出ている。
米国の紛争鉱物ルールは、連邦控訴裁の判決により、一部後退したが、それでもシュナイダーエレクトリック社のように自主的に「コンフリクト・フリーとは判定されなかった」記載を実施する企業も少なくない。また、EUでは別の紛争鉱物ルールを制定しようとしてもいる。紛争鉱物に関係する企業は、米証券取引委員会の動きを注視していくとともに、自社としてのポリシーをしっかり立てていく必要がある。
【参考】【EU】欧州委、EU理事会、欧州議会。紛争鉱物規制のためEU法整備で合意(2016年12月8日)
【参考ページ】Changing of the Guard: SEC Reconsiders Conflict Minerals Rule While Congress Votes to Overturn ‘Publish What You Pay’ Reporting for Extractive Companies
【参考ページ】Discussed Changes to Dodd-Frank Will Not Affect 2017 Conflict Minerals Filing Requirement
【委員長代行声明】Reconsideration of Conflict Minerals Rule Implementation
【委員長代行声明】Statement on the Commission’s Conflict Minerals Rule
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