米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気庁(NOAA)は1月18日、2016年の地表温度が1880年の観測開始以来の史上最高記録を更新したと発表した。世界の平均気温は2015年が過去最高だったが、2016年はそれを上回る結果となった。NASAのゴダード宇宙科学研究所(GISS)のギャヴィン・シュミット所長は、これは2014年以来3年連続の記録更新となるとし、今後も温暖化傾向は長期的に続くだろうと懸念を示している。
NASAは、気象観測所6,300カ所での地表温度の測定、船やブイでの海面温度の観測、南極研究観測所からの気温測定などを基に、統合的な分析を実施している。毎年、観測地点と測定作業には多少の変更があるため、年間の世界的平均気温差を確実に解釈することは困難だが、NASAはこの難しさを考慮したとしても、2016年が95パーセントを超える確率で最も気温が高い年であったと判断した。2016年は観測史上最高を記録しただけではなく、同年のうち1月から9月にかけて6月を除いた8カ月間は月別でも過去最高記録を更新。10月から12月の3カ月も2015年に次ぐ史上2番目となった。その結果、2016年の世界の平均気温は、20世紀半ばの平均値よりも0.99℃上昇、地表温度の平均も19世紀後半から1.1℃上昇したことになる。
地球温暖化の主な原因は、人類社会による温室効果ガス排出量の増加。温暖化の傾向はここ35年間で顕著となり、気温上昇が観測された17年間のうち16年が2001年以降の記録となっている。さらに、北熱帯太平洋でのエルニーニョ現象やラニーニャ現象も風向きと気候パターンに影響を及ぼしており、世界の平均気温が短期的にも変化してきている。2015年から2016年4月にかけてはエルニーニョ現象が顕著で、研究者は、エルニーニョ現象が2016年の世界的平均気温に与えた直接的な影響は0.12℃の上昇だと見積もっている。
細かくみると、気象力学が気候変化をもたらすのは地域ごとに差があり、世界全体で昨年最も高い平均気温を記録したわけではない。NASAとNOAAは、米国48州では2016年の年間平均気温は史上2番目に高かったとしているが、一方、北極圏では2016年が過去最高。これは北極圏での海氷面積が最小を記録した事実と矛盾しない結果となっている。
この他、NASAは衛星からの空及び大気圏外の状況も測定しており、国際社会の重要な情報源となっている。しかしながら、米国の新トランプ政権は、このようなNASAやNOAAの気候変動観測は「不要」だと判断しており、観測予算が大幅に削減される見込みだと言われている。さらに、トランプ政権は前述の陸、海等での観測についても予算削減を行う可能性を示唆しており、世界中の関係者が動向を不安視している。
【参照ページ】NASA, NOAA Data Show 2016 Warmest Year on Record Globally
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