中国の国家エネルギー局は1月17日、新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区、甘粛省、寧夏回族自治区、青海省、陜西省の中国北西部6省、中国北部の山西省、中国中南部の河南省、山東省、中国南部の広東省、広西省、合計11省・自治区に対し、すでに建設中のものも含め現在計画中の石炭火力発電所プロジェクトを全て凍結することを命じる命令「关于衔接某省“十三五”煤电投产规模的函」を発令した。理由として、1月5日に同局が発表した「第13次5カ年再生可能エネルギー発展計画」で将来に渡り石炭火力発電所の増加を抑制していく方針を挙げた。同時に、この冬に中国北部で深刻な大気汚染が発生したことも理由と見られる。
【参考】【中国】石炭から再生可能エネルギーへのシフトを鮮明に。国家エネルギー局「エネルギー発展計画」発表(2016年1月15日)
11省で石炭火力発電所プロジェクトが凍結される影響は極めて大きい。中国の経済報道メディア財新.comが独自の集計をしたところ、凍結される石炭火力発電プロジェクトは全部で101件。凍結されたプロジェクト総投資額は623億米ドル(約7兆円)。総設備容量は100GWに上るという。また、中国国家電力需要サイド管理プラットフォーム(中国国家電力需求側管理平台)も、凍結されるプロジェクトは82件以上、総設備容量94GWという見方を発表している。
中国では、中央政府が2014年に火力発電所プロジェクトの承認権を省・自治区に移譲して以来、各省・自治区が地域の経済発展を見込んで大量のプロジェクトを発注。それにより電力供給過剰、市場全体での非効率という状態が続いてきた。それに対し中央政府は2016年から石炭火力発電所の新規建設を抑制する方向に舵を切っており、9月には9省で計画されていた15件の石炭火力発電所(総設備容量12.4GW)のプロジェクトが凍結されている。さらに中国は今年1月発表の「第13次5カ年再生可能エネルギー発展計画」の中で、国内の総発電設備容量に占める石炭火力発電の割合を2015年の59%から55%に引き下げ、再生可能エネルギーに転換していく目標を掲げている。目標達成のためには150GW分の石炭火力発電所プロジェクトが凍結または白紙化される必要があり、今後も同様の対応が相次ぐ可能性は高い。
China Times誌は、今回凍結命令が出なかった残りの11省・自治区で現在143GWの石炭火力発電所プロジェクトが計画されており、第2段として貴州省、江蘇省、福建省、湖北省、河北省などで同様の凍結命令が出されるだろうと見立てている。
中国での電力消費量は経済発展に伴い上昇を続けているが、2016年は前年比で5%増加と、2015年の前年比0.5%と比べて非常に大きな伸びとなった。大きな理由としては、2016年中国では1961年以来の暑さとなりエアコン利用量が増えたことであり、2017年の電力消費量の伸びは3%から5%になるとみられている。
しかしそれでも石炭火力発電を建設する必要性は小さい。ロンドンにある環境NGOのCarbon Trackerが2016年11月に発表した報告書によると、中国は少なくとも2020年までは新規の石炭火力発電所建設は必要ないという。中国には現在895GW分、2,689の石炭火力発電所が稼働中だが、2016年7月時点での全体の稼働率は半分以下と言われる。また国家エネルギー局の発表では、中国の火力発電(89.3%が石炭火力発電)の稼働時間は2016年平均で4,165時間であり、2015年比で発電所あたり199時間減少している。
【参照ページ】China Halts Construction of 101 Coal Power Plants
【参照ページ】11省份煤电项目被叫停 能源局或酝酿“大招”
【参照ページ】“十三五”规划拟建煤电装机规模预计减半
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