オランダの有機青果流通のNature&Moreは今年1月、スウェーデンのスーパーマーケットICAと提携し、有機アボカドとサツマイモのラベル表示に従来型の合成紙を用いず、商品の皮にレーザーでラベリングする試みを開始した。生産地等を表示する目的で青果物に貼りつけられている小さなラベルは、多くが合成紙と呼ばれる、耐水性と耐久性に優れたプラスチックを材料としている。これまでこのラベルについては、環境保護という視点から見直しや改善の対象となることがほとんどなかったが、包装の簡素化を求める消費者の声に応じた。
スーパーや小売店の一部には、成果物を販売する際に、プラスチック包装から厚手の紙箱での梱包に切り替えるところも出てきてはいるが、バラで一つずつ販売する際には、EUのルールで全てのアイテムにラベリングが必要。そのため、必然的に多量のラベルを貼る事になる。しかし、レーザーを使う方法だとこの手間が省け、しかもラベルが剥がれ落ちるという心配もなくなる。
「ナチュラル・ブランディング」と呼ばれるこの技術は、青果物の表皮に強い光を当てて色素を取り除くもので、保存期間や美味しさ(食味)に影響を及ぼさない。ICAによると、全てのアボカドにこの方法でラベリングをした場合、年間で幅30㎝、長さ200㎞分のプラスチックの使用が削減できるという。さらにこの方法による二酸化炭素排出量は同様のサイズのラベルを製造する際の排出量の1%。また、輸送を必要としないため、その分のエネルギー消費量や二酸化炭素排出量もゼロにすることができる。EU域内規制に適合しているかを判断するオランダ経済省管轄のオーガニック食品認定機関SKALもこの手法を承認している。
英紙ガーディアンによると、ICAの顧客の20%がいわゆるオーガニック志向顧客。オーガニック志向顧客は、気候変動や健康に関する関心が高く、とりわけ若い消費者にはこのような傾向が強いという。包装の簡素化によりICAは顧客ニーズにさらに対応していく予定だ。ICAは、ラベルの貼り付けが困難なアボカドやサツマイモから「ナチュラル・ブランディング」の使用を開始しているが、夏場に出回るメロンもラベルが剥がれやすく、候補に上がっている。さらに次のステップとしては、リンゴやネクタリン等そのままかじる青果物でも使うことを検討している。消費者の反応がよければ、使用範囲は無限に広がると担当者は語っている。
英紙ガーディアンは、またそれに先駆け、英国スーパーマーケット大手マークス・アンド・スペンサーでも同様の試みをしたことを紹介。昨年マークス・アンド・スペンサーは、オレンジに対して「ナチュラル・ラベリング」を利用したが、柑橘類には自ら果皮を回復する性質があり、オレンジには適していなかったため中止されたという。現在同社は、ココナッツで「ナチュラル・ラベリング」を実験している。
ナチュラル・ブランディングの技術は、ここ数年欧州で使われ始めているが、もともとはサステナビリティ起因ではなく、ラベリングそのものの課題解決に向けたことがきっかけだっという。「ナチュラル・ラベリング」のためのレーザー機器の価格はまだ非常に高額だが、Nature&Moreの担当者によると従来型のラベルが不要になる分のコスト削減を考えると、十分投資回収をしていけるという。
関係者にとっては、消費者の反応が一番の関心事だが、スウェーデンのソーシャルメディア上のフィードバックは肯定的なものだという。ICAの担当者は、「小規模の取り組みでもサステナビリティの向上は消費者にとって望ましい事であり、扱っている青果物が有機かどうかに拘わらず、ナチュラル・ブランディングが他のスーパーにも拡大してほしい」と述べている。
【参考ページ】Swedish supermarkets replace sticky labels with laser marking
【参考ページ】Nature & More replaces labels with laser mark
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