世界経済フォーラム(WEF)は1月17日、年次総会(通称ダボス会議)の場で「グローバルリスク報告書2017」を発表した。世界経済フォーラムは毎年ダボス会議のタイミングに合わせてこの「グローバルリスク報告書」を発表しており今回が12回目。
報告書の作成では、まず世界経済フォーラムの専門家メンバー約750名に対しアンケート調査「Global Risks Perception Survey(GPRS)」を実施し、その結果をもとに集計を行っている。調査票には30のリスクが挙げられており、それぞれのリスクについて今後10年での発生可能性と負のインパクトの2つの観点について回答が求められる。集計と分析はマーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーとチューリッヒ・インシュアランス・グループが担当している。
(出所)Global Risks Report 2017
今回の報告書で最も発生可能性が高いとされたリスク
- 異常気象
- 大規模な非自発的移民
- 大規模な自然災害
- 大規模なテロ攻撃
- 大規模なデータ詐欺・データ盗難
今回の報告書で最も負のインパクトが大きいとされたリスク
- 大量破壊兵器
- 異常気象
- 水の危機
- 大規模な自然災害
- 気候変動緩和・適応の失敗
発生可能性に関するランキングでは、昨年1位であった「大規模な非自発的移民」は2位に後退し、昨年2位であった「異常気象」が1位となった。異常気象とともに気候変動に関係する「大規模な自然災害」も昨年の5位から3位に上がった。また、「異常気象」と「大規模な自然災害」は負のインパクトランキングでも上位につけ、ここでも気候変動の影響が強く懸念されていることが伺える。一方、新たに「大規模なデータ詐欺・データ盗難」がトップ5入りし、IT社会でのデータプライバシーや企業機密に関するリスクが高まっているという認識となった。
また、「大規模なテロ攻撃」が発生可能性ランキングで初めてトップ5入りし、「大量破壊兵器」が負のインパクトランキングで昨年2位から1位に浮上するなど、戦争・紛争リスクが専門家の間で強く意識され始めていることを示す結果となった。
一方、昨年の報告書から開始されたリスク間の相互連関性について尋ねたところ、今後世界の発展について重要となるテーマとして、所得向上と貧富の格差(1位)、気候変動(2位)、社会の両極化(3位)、サイバーへの依存(4位)、高齢化社会(5位)が挙げられ、「所得向上と貧富の格差」という経済観点が最上位となった。また、相互連関性がとても強いとされるリスクについては、1位「失業・過少雇用と基礎的な社会不安定」、2位「大規模な非自発的移民と国家の崩壊・危機」、3位「気候変動緩和・適応の失敗と水の危機」、4位「自然ガバナンスの失敗と基礎的な社会不安定」、5位「大規模な非自発的移民と地域的事情による国家間紛争」の順となった。
2010年まではグローバルリスクの中でも経済や金融リスクが上位をほぼ独占していたが、2011年以降はそれにもまして環境リスクや社会リスクが上位を占めるようになってきた。とりわけ、今回の報告書の中には、2016年に発生した英国EU離脱(ブレグジット)や米トランプ大統領候補勝利などの選挙についても多く触れられており、以前から認識されていた気候変動や水の問題など環境リスクに加え、経済リスクや社会不安がますます高まっていることを感じさせる結果となった。
【報告書】The Global Risks Report 2017
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