英国王室領を管理する公益法人Crown Estateは1月9日、2017年の事業報告書「Total Contribution Report」を発表した。Crown Estateは、ロンドン中心部や英国沿岸部等、資産総額120億ポンド以上の広大な不動産を管理しており、2013年より財務インパクトだけでなく、環境や社会のインパクトについても報告を行う「Total Contribution Report」を毎年発行している。2期目の2014年からはPwCが報告についての第三者評価を実施。このTotal Contribution Reportは、トリプルボトムラインや統合報告のあり方の一つの模範として注目を集めている。
Total Contribution Reportでは、事業資本として6つを扱い、それぞれの評価を行っている。6つの資本の分類方法は、国際統合報告評議会(IIRC)の国際統合報告フレームワークに酷似している。
- 財務資本
- 人的資本(スキル、行動特性、経験)
- 物的資本(不動産、工場、設備)
- 自然資本
- 知的資本(組織内に蓄積されたノウハウ)
- ネットワーク資本(顧客、コミュニティ、ビジネスパートナーとの社会・関係資本)
Total Contribution Reportは、これら6つの資本について、毎年定量的にどれだけの価値を追加できたかを分析、情報開示し、その価値の合計を以て英国大蔵省への貢献としている。2016年での価値創造は、財務資本で3億2,000万ポンド、物的資本は1億1,180万ポンド、自然資本は2,700万ポンド、人的資本は100万ポンド、知的資本は3億7,000万ポンド、ネットワーク資本は1,500万ポンド。財務資本としての運用パフォーマンスは過去5年間市場平均を上回り続けている。
報告書の中では、事例として「Recruit Londonプログラム」を取り上げて説明をしている。同プログラムは、Crown Estateがロンドン中心部のリージェント・ストリートからセント・ジェームスにかけ所有している約0.74km2の商業不動産で、ウェストミンスター市とCross River Partnershipと協働で就業支援のサポートを行っている。2009年の開始から、ロンドン市民約1,330名の就職と、社会福祉費など総額4,000万ポンドのコスト削減を実現。雇用創出によりさらに税収増や社会保険歳入などに貢献している。
企業にも財務情報だけでなく非財務情報開示が求められていく中で、環境負荷などの負の側面だけでなく、改善や貢献を定量的に示していくことが今後求められていく。統合思考の一つの考え方として、Total Contribution Reportのあり方は参考となるはずだ。
【参照ページ】Ground-breaking approach to understanding business value launched
【報告書】Total Contribution Report 2017
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