エネルギーと経済・財務との関係を研究する米国のエネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は1月6日、中国の再生可能エネルギー戦略に関する報告書「China’s Global Renewable Energy Expansion: How the World’s Second-Biggest Economy Is Positioned to Lead the World in Clean-Power Investment」を発表した。報告書によると、中国の2015年単年での国内再生可能エネルギー(大規模水力除く)投資額は、前年比17%増の1,020億9,000万米ドル(約11.7兆円)。同時に中国は海外での再生可能エネルギー開発にも投資をしており、2016年の海外投資額は、ブラジル、オーストラリア、チリ、パキスタン等で321億米ドル、前年を60%上回る規模となった。報告書は、中国が再生可能エネルギーへの投資を拡大しており、テクノロジー、投資、製造、雇用において当該分野のリーダーシップを発揮していると総括している。
(出所)IEEFA
中国の2015年の再生可能エネルギーへの投資額1,020億9,000万米ドルは、世界の再生可能エネルギー投資額の3分の1を超える規模で、第2位の米国の441億米ドルを遥かに凌駕している。大部分は国内での投資だが、中国企業や機関は、再生可能エネルギーの進展の機会を海外に求める傾向が強まっている。同時に雇用の分野でも、全世界の再生可能エネルギー分野で雇用されている810万人のうち、中国での雇用が350万人。米国の79万9,000を大きく上回っている。
例えば、風力発電では、中国企業のゴールドウィンドがデンマークのヴェスタスを抜き、世界最大の風力タービンメーカーとなった。国内向けの風力発電を主な市場としているユナイテッドパワー、明陽風電(Ming Yang)、遠景能源(Envision)、CSICを含め、中国は世界トップ10の風力タービンメーカーのうち5社を占めている。また、太陽光発電でも、2016年の世界最大の太陽光モジュール製造工場6カ所の内、5カ所が中国にある。
バッテリー分野でも存在感を示している。中国の四川天斉リチウム社は、2012年にタリソンリチウムを、2015年には江蘇省にあるギャラクシー社の加工工場を買収し、世界最大のリチウムイオン製造業者となった。中国は国内でのレアアース採掘によってリチウムバッテリー業界をコントロールできる地位にあり、世界のレアアース採掘の90%、レアアース加工の72%は中国企業が担っている。
海外展開においては、中国政府の掲げる「一帯一路」や「シルクロード基金」等の「Going Global(走出去)」政策において、中国ーパキスタン経済回廊、バングラデシュー中国ーインドーミャンマー(BCIM)経済回廊の再生可能エネルギー分野に投資をしており、同地域は中国にとっての戦略的地域となっている。
今回のリポートには、国内外で再生可能なクリーンエネルギーのフットプリントを拡大している中国企業30社のケーススタディも掲載されている。一方、米国がトランプ新政権のもとで石炭等化石燃料推進、再生可能エネルギー後退の政策へとシフトする場合、米国での再生可能エネルギー産業は競争力を確実に低下させることになると警鐘を鳴らしている。
新たな政権がトランプ氏の主張通り、石炭等、従来のエネルギー資源に拘り、再生可能エネルギーへの転換を遅らせる場合、活気づいているこの分野での経済的な競争力をほぼ確実に低下させるだろうと予測している。
【参照ページ】IEEFA Report: China Set to Dominate U.S. in Global Renewables Boom; $32 Billion in Overseas Investments in 2016 Alone
【報告書】China’s Global Renewable Energy Expansion
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