米環境保護庁(EPA)は12月20日、同庁、米国司法省(DOJ)、米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)と、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)との間で2009年から2016年に米国内で販売またはリースされた3リットルディーゼル車8万3,000台のリコールに合意したことを発表した。VWには、さらに窒素酸化物低減のための信託基金に2億2,500万ドルの支払が課せられる。VWの排ガス不正事件では、2リットルディーゼルエンジンでの不正は世界中を対象に波及したが、3リットルディーゼル車では北米でのみ違反が指摘されており、今回その3リットルディーゼル車で米国政府との司法取引が合意に至った。
今回の和解は、VWグループが、後述する2期間にわたり連邦政府の「大気浄化法」とカリフォルニア州の大気質規制に違反した排ガス不正問題に対する措置だ。排ガス検査の際に特定の車種に不正な装置を搭載し、規制をクリアしていたかのように偽っていたという。
2016年1月4日にEPAの代理として米国司法省が起こしたVWに対する民事訴訟、そして2016年10月7日に行われた修正によると、VWは、3リットルディーゼル車にEPAやカリフォルニア州の排出基準の遵守を検査する台上試験の時だけ機能する違法なソフトを搭載し、そのテストの過程では要請される排出量のコントロールが可能だったという。
しかし実際の走行条件では、そのソフトの排出コントロールは機能しないか、あるいは効果が薄く(低く)なっており、結果として排出量が増加していた。このソフトはディフィート・デバイス(実際の走行時には無効になる無効化機能)として知られており、試験場では機能しても、路上の走行の際には、EPA規定レベルの二酸化窒素の9倍またはそれ以上を排出するという。従ってこのようなソフトの搭載は「大気浄化法」違反であり、認可はされない。
VWによる3リットルディーゼル車へのディフィートデバイスは、「ジェネレーション1」と呼ばれる対象車種が2009年から2012年までの間に販売またはリースされたフォルクスワーゲンの「トゥアレグ」とアウディ「Q7」のディーゼル車で、「ジェネレーション2」と呼ばれる比較的新しい車種は、2013年から2016年のフォルクスワーゲンの「トゥアレグ」、2013年から2015年アウディ「Q7」、2013年から2016年ポルシェ「カイエン」等だ。
今回の合意でVW側は、「ジェネレーション1」に関しては、買取と無償でのリース終了を求められる。もし修理により大幅な排出削減が可能な場合は、EPAとCARBに申請し、認可された場合には、修理もオプションとして消費者に提示できる。また、「ジェネレーション2」に関しては、修理により規制に合致した排出量への削減を実証できた場合には、販売者の修理対応が認められるが、修理による効果が当局のテストで認められない場合は買取が命じられる。もし他の手法の修理で効果が認められた場合には、修理対応オプションも購入者に提示できる。
EPAによると、今回の合意は、係争中の民事訴訟や将来的な刑事責任を解決するものではない。さらには消費者や連邦取引委員会、裁判管轄横断訴訟が進行中の個人所有者やリース契約者からのクレームを解決するものでもない。カリフォルニア州では、3リットルディーゼル車の違反に関しては、同州の自動車や消費者に特定した解決策を容認している。
今回の合意の下では、ジェネレーション1と2、それぞれのリコール率を少なくとも85%達成しなけなばならず、達成できない場合には二酸化窒素排出量削減信託ファンドに追加金を支払うことになっている。ジェネレーション1に該当する車種の所有者またはリース契約者は、今回の合意が裁判所に承認された後にオプションに関する最新情報を受け取ることになる。同時にウェブサイトでも閲覧できる。
【参照ページ】Volkswagen to Recall 83,000 3.0 Liter Diesel Vehicles and Fund Mitigation Projects to Settle Allegations of Cheating Emissions Tests on Volkswagen, Audi and Porsche Vehicles
【参照ページ】フォルクスワーゲン社による排出ガス不正事案の状況と国交省等の対応
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