米国初の洋上風力発電所「ブロック島風力発電所」が12月12日、運転を開始した。場所は米国東海岸ロードアイランド州ブロック島約6km沖。事業主は同発電所を建設するために組成されたディープ・ウォーター社。同発電所の設備容量は30MW(6MWタービン5基)と欧州のものに比べ小規模だが、ついに米国でも洋上風力発電所が誕生した。
ブロック島風力発電所の運転開始までには非常に多くの時間がかかっている。構想が始まりディープ・ウォーター社が組成されたのは2009年。風力発電所事業の肝となる電力事業者との電力販売契約(PPA)は、National Grid社との間で同年に締結されたものの、その後が大変だった。電力提供地となるロードアイランド州の法規制、電力ケーブルが敷設ルートとなる連邦管轄海域での連邦法規制、連邦政府の電力法規制など数多くの当局や関連団体から異議が唱えられ、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)での審議にまでもつれ込んだ。風力発電所の建設は2014年には開始されたものの、各界からの反論が最終的にFERCで棄却されたのが2015年11月。そして2年間の建設期間、試運転フェーズを経て、ついにこの日営業運転が開始された。これにより、米国は洋上風力発電を開始した世界15番目の国となった。
同プロジェクトへの非常に多くの企業が資金提供に関わっている。まず建設主体であるディープ・ウォーター社には、再生可能エネルギー専業の米First Wind、投資会社D. E. Shaw & Co.、米ヘッジファンドOspraie Managementなどが出資している。またブロック島風力発電所プロジェクトにはディープ・ウォーターの他にも、D. E. Shaw & Co.の関連会社、シティグループ、GE Energy Financial Servicesが出資している。デットファイナンス面ではソシエテ・ジェネラル、KeyBank、HSBC等が融資した。同発電所のタービンは、GE Renewable Energy製。実際にはAlstom Wind社製だが、Alstomはプロジェクト途中の2015年11月にGEに買収された。
米国で洋上風力発電所建設が欧州に比べ大幅に遅れている理由について、オンラインニュースサイト「EcoRI News」の編集部門幹部Tim Faulkner氏は、洋上風力に関する州と連邦の大幅な関連法規制の障壁と、欧州に比べ陸地が豊富なため陸上風力のほうが米国で進んできたという背景を挙げている。同氏によると、関連法規制は今回の米国初洋上風力発電所誕生の過程で大幅に整理されてきたため今後の開発には弾みがつきそうだと話す。また、空地が豊富な米国内陸部に比べ東海岸地域、特にニューイングランド地域では、人口密度が高い一方空地が少ないため、今後もニューイングランド地域では洋上風力の開発が進みそうだと展望を述べた。
ディープ・ウォーター社は、ブロック島風力発電所の建設に際しては、大規模な雇用創出効果があったことも強調している。建設プロジェクトでは300人以上が業務にあたり、さらに風力発電設備やケーブルを提供したメーカー、機材や労働者を輸送するための海運事業者や港湾施設などにとって大きな雇用創出と経済効果があったとしている。
ブロック島風力発電所は、2009年の構想開始時点では、タービン100基を並べる設備容量385MWの規模が予定されていた。その後の論争の中で、30MWまで規模は縮小してしまったが、もともと予定されていたマサチューセッツ州やロードアイランド州などの沖では、今後も洋上風力プロジェクトが進んでいきそうだ。
【参照ページ】America’s First Offshore Wind Farm Powers Up
【参照ページ】Four Strong Winds: First US Offshore Wind Project Launches
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