オランダのユトレヒト大学のウィルフリート・ファン・サーク(Wilfried Van Sark)准教授らのグループは10月28日、過去40年間に太陽光発電パネルで発電により節約されたエネルギーは、そのパネルの製造に使用されたエネルギーをほぼ相殺したとする論文を、学術ジャーナル「Nature Communications」に発表した。太陽光発電は二酸化炭素排出量の削減に寄与する一方、パネルの製造ではエネルギーを消費している。太陽光発電懐疑派からはパネルの製造によりエネルギー消費量はむしろ増えているという議論があり、サーク准教授らが実態調査を行っていた。
サーク准教授らは、1975年から2015年にかけての太陽光発電の導入量とエネルギー消費量、二酸化炭素排出量を調査。調査からは、太陽光発電の導入発電設備容量が2倍になるごとに、パネル製造に使われるエネルギーは多結晶パネルで12%、単結晶パネルで13%減少し、二酸化炭素排出量も多結晶パネルで17%、単結晶パネルで24%削減することがわかった。このように、太陽光発電の製造工程では、年を経る毎にエネルギー消費量や二酸化炭素排出量を減少させる、一種の「経験曲線(Experience Curve)」が機能していることがわかった。
その他研究の要点として、ユトレヒト大学は以下の成果を発表している。
規模の経済と効率性
生産コストは、1970年代に太陽光発電が導入され始めた当時の1ワット当たり75ユーロから、今日では1ユーロ以下にまで減少した。その理由には、太陽光パネル生産における規模の経済性の効果に加え、技術や生産プロセスの革新が挙げられる。その結果、パネル1枚当たりのエネルギー及び原材料の消費量も減少する一方、パネルあたりの発電量が上昇したことで大幅な効率性改善につながった。
温室効果ガス排出
同2014年末に太陽光発電利用による二酸化炭素削減量は生産時における排出量に並び、現時点では上回っている。
全電力供給量の1.5%分
現時点で、世界では300GW分の太陽光発電が設置されており、パネルの延べ面積は約1,800km2に及ぶ。その広さはサッカー場約25万個分。これらのパネルの総発電量は2016年1年間で370TWhに上るものの全電力供給量に占める割合は1.5%に過ぎない。それでも、二酸化炭素削減効果は170Mtに及び、太陽光発電の更なる拡大余地は十分に大きい。
更なる効率性の追求
太陽光パネルの生産プロセス、技術革新が依然可能であることを踏まえると、太陽光発電導入による二酸化炭素排出量の実質量(パネル生産時の排出量ー導入による削減量)はさらに改善するものと考えられる。例えば、太陽光パネルの主要素材であるシリコンウエハーの薄型化、ウエハー切断工程の効率化、廃棄量削減、電気の取り出し口となる銀電極の銀使用料削減などが期待されている。
【参照ページ】Solar energy currently cheapest and cleanest alternative to fossil fuels
【論文】Re-assessment of net energy production and greenhouse gas emissions avoidance after 40 years of photovoltaics development
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