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【中国】国務院、象牙の商業取引を2017年末までに全面禁止

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 中国政府の国務院(内閣に相当)は12月29日、中国国内での象牙の商業取引を全面的に禁止する命令「国務院弁公庁関於有序停止商業性加工銷售象牙及製品活動的通知」を発表した。2017年末に国内での商業取引が一切禁止される。

 象牙製品で使用される象牙は世界的にアフリカゾウのものが多い。高単価で取引されているアフリカゾウは密猟が絶えず、1989年に絶滅危惧種の国際取引を規制するワシントン条約に登録され、それ以降国際的な輸出入が原則禁止されている。しかし、同条約のもとでも、ワシントン条約登録以前に採取された象牙や、自然死した象から採取された象牙などについては商業取引が認められているため、中国や日本では現在も印鑑等の製品で象牙商品が流通している。そのため、取引市場には密猟された象牙の混入が続いており、中国市場には過去10年間で10万頭、昨年だけで3万2000頭が密猟されたという報告結果もある。また、象牙取引に関与する密猟からの収入はテロ組織の資金源になっているとも指摘されている。

 このような状況を受け、国際環境NGO国際自然保護連合(IUCN)が開催する「世界自然保護会議」は2016年9月、象牙の国内取引の全面禁止を採択。翌10月に開催されたワシントン条約(CITES)締約国会議も、締約国に対し国内市場を閉鎖という内容を盛り込んだ勧告決議案を採択した。世界自然保護会議の採択も、ワシントン条約締約国会議の採択も、法的拘束力を伴うものではないが、これにより象牙の国内取引の禁止、市場の閉鎖を求める機運が高まっていた。

【参考】IUCN世界自然保護会議、象牙取引の全面禁止や海洋生物多様性保護を決議(2016年10月13日)

 象牙は、中国では富裕層の装飾品として人気が高く、現時点で国内に加工業者が34社、販売所が143カ所ある。今回発表された中国の象牙取引禁止命令は、4つの内容で構成されている。

 まず、商業取引禁止を段階的に実施する。2017年3月31日までに特定の象牙加工所や販売所を禁止する。禁止される加工所及び販売所については国家林業局がリストを作成し公表する。続いて、2017年12月31日までに象牙の加工及び店頭及びインターネット等全ての販売活動を、全面的に禁止する。これに伴い、工商行政部局は、象牙加工所と販売所の新規登録及び登録変更を停止するとともに、既存の加工所及び販売所の登録も順次抹消していく。

 文化的な象牙芸術については例外的な措置を採る。中国では象牙を用いた彫刻などは伝統工芸とされているが、国家級または省級の象牙芸術家に対しては政府への登録制度を整備。登録申請においては、工芸工程や技術などの詳細資料の提出などが要求される。国家級または省級以外の象牙芸術家に対しては、商業彫刻ではなく博物館等での象牙作品修復に従事するか、その他の素材を用いた彫刻へと転向することになるとし、象牙彫刻が禁止される内容となた。

 既存の象牙や象牙製品についても大幅に規制を課す。具体的には、博物館、美術館など非商業利用目的での陳列、展示、それに伴う輸送、贈与、相続などは認められる。また既存の象牙及び象牙製品の譲渡に関しては、行政当局による許可制とし、厳格な規制のもとでのみ許可される。

 商業取引禁止措置に伴う取締も許可する。警察、税関、工商、林業等の各行政部局は取締体制を強化し、違法行為を根絶していく。また、教育や広報関連部局に対しては、象牙違法取引などの教育の強化、野生動物保護の啓蒙などを実施してく。

 中国とともに象牙取引の世界2大市場である米国では、2016年に先んじて象牙取引の禁止が制定されている。一方、印鑑など象牙製品需要が高い日本では、政府は国内での商業取引禁止の必要はないと主張している。日本の環境省は、ワシントン条約締約国会議の場でも、国内法での商業取引管理を徹底していることを理由に、アフリカゾウの個体数減少は避けられていると述べ、全面的な国内取引の禁止に反対した。しかし、NGOなどの調査によると、日本市場にも密猟象牙が流通している実態が報告されている。米中2国による矢継ぎ早の国内取引禁止措置を受け、日本への圧力はさらに強まりそうだ。

【参照ページ】2017年底前我国将停止商业性加工销售象牙及制品
【参照ページ】2017年中国实现象牙禁贸是对保护非洲大象的重大利好
【命令】国务院办公厅关于有序停止商业性加工销售象牙及制品活动的通知 国办发〔2016〕103号
【参照ページ】China Says It Will Shut Down Ivory Trade by End of 2017

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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