バーゼル条約とは
バーゼル条約(Basel Convention)とは、1989年3月にスイスのバーゼルで採択された条約で、正式名称は、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」。一定の有害廃棄物の国境を越える移動などの規制についての国際的な枠組みと手続きなどを規定しています。1992年5月5日に発行。2015年5月現在、締約国は183カ国とEU及びパレスチナとなっています。
背景
本条約が作成された背景には、1970年代から行われてきた有害廃棄物の国境を超えた移動があります。1980年代には、有害廃棄物が欧米の先進国からアフリカの途上国に輸送され、アフリカでは環境汚染が問題となっていた上、これらの廃棄物による問題の最終的な責任の所在が不明確でした。そこで経済協力開発機構(OECD)及び国連環境計画(UNEP)で議論がなされ、バーゼル条約締結へと辿り着きました。
日本は、以前からリサイクル可能な廃棄物を輸出入しており、本条約の下、貿易を行うことで地球環境への貢献をすると判断され、1993年9月17日に加入書を寄託し、同年12月16日から日本での適用が開始しました。
概要
本条約は「前文」「本文29か条」「末文及び9の付属書」の構成となっています。
(1)バーゼル条約の目的
バーゼル条約の目的は以下の3つです。
・有害廃棄物の削減及び有害廃棄物の適切な処理の推進
・有害廃棄物の国境を越える移動の制限
・国境を越える移動が許される場合における規制システムの役割
(2)規制対象
規制対象となる廃棄物について、附属書Ⅳに掲げる処分作業がなされるもので、かつ以下のいずれかに当てはまるものと規定されています。
・附属書Ⅰに掲げるいずれかの分類に属する廃棄物
・附属書Ⅱに掲げるいずれかの分類に属する廃棄物
・締約国の国内法により有害とされている廃棄物
(3)COPについて
また、COP(Conference of the Parties)は、本条約第15条に基づいて設置されます。COPでは、バーゼル条約の適用状況や追加条項の検討、及び有害廃棄物による健康被害や環境破壊の軽減ための政策や戦略などを、世界全体で近づけるよう促進する役割があります。
(4)バーゼル条約事務局による通報
締約国は、バーゼル条約が規定していない有害廃棄物の国境を越える移動についても、要件を定めることが可能です(第3条)。また、有害廃棄物または他の廃棄物の処分を目的とする輸入の禁止をする権利もあります(第4条1項)。これらを行う際、各締約国はバーゼル事務局に通報する必要があり、当該事務局が他の締約国に通達することになっています。そのため他の締約国は、通達を発した国に輸出する際、輸出品が禁止項目に該当しないか確認することが重要です。実際に中国やフィリピン、トルコ、メキシコなど約40か国が既に通報をしています。
国内の取り組み
日本では、バーゼル条約とOECD理事会決定に沿うため、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)、そして「外国為替及び外国貿易法」(外為法)により廃棄物等の輸出入の規制を行っています。バーゼル法では規制対象物を定めており、例として、使用済み鉛バッテリーや有害金属を含む汚泥などが挙げられます。また廃棄物処理法では、廃棄物の定義を「占有者が自ら利用しまたは他人に優勝で売却することができなくなった物」としています。該当性については、物の正常や排出状況取引価値の有無などを包括的に考慮して判断されます。現状
バーゼル条約に多くの国が締結したとはいえ、途上国の被害の現状はまだ厳しい状態です。アフリカや東南アジアへは、再利用がほぼできない状態の電子製品が中古品と輸出され、現地の安価な労働力によって製品を分解し、取り出した金属を海外へ売るというビジネスが確立しつつあります。現地で働く人たちの中には子供や若者もおり、金属を取り出す時に出る有害ガスを吸い込んでしまうことで、呼吸器への健康被害も出ています。さらに、分解された廃棄物はゴミ山に積まれたままで、周辺住民にも水質汚濁や土壌汚染などの被害が起きています。
このようなことが起こる原因には、各国の廃棄物の定義の相違やルールの欠陥があると指摘されています。
参考文献・サイト
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