水産加工世界大手、ツナ缶世界最大手のタイ・ユニオン・グループ(タイ・ユニオン)は12月13日、2020年までに同社のまぐろ調達75%以上で持続可能な漁業認証を取得した漁業事業者から調達することを宣言した。さらに将来同割合を100%に上げることも宣言した。同社は同時に、調達元の漁業従事者のサステナビリティ改善に向けた取組「Fishery Improvement Project(FIP)」を立ち上げる。
【参考】持続可能な漁業「MSC認証」取得事業者が世界で増加。日本を含むアジア地域は依然少ない(2016年11月2日)
同社が「持続可能な漁業」する基準は、世界で最も普及している「持続可能な漁業」認証2つのうちの一つ、MSC認証をベースとする。しかし、現在MSC認証を受けているまぐろ漁業事業者は世界で11社のみ。漁獲高では全体量の14%にすぎない。そのため、同社が掲げた「75%目標」の調達基準として同社が認めるものは、MSC認証を取得した事業者の他、同社がMSC認証に準拠したレベルで実施するFishery Improvement Project(FIP)で認定された事業者でも可とする。対象品目については、同社が世界各地で手がける全商品ブランドを対象とする。ブランドには、Chicken of the Sea(北米)、Genova(北米)、John West(北欧、中東)、Mareblu(イタリア)、Petit Navire(フランス)、SEALECT(タイ)が含まれる。
同社が発表したツナ事業戦略では、持続可能なまぐろ調達体制を整えるために9,000万ドル以上の投資を見込んでおり、世界11ヶ所で漁業改善プロジェクト「Fishery Improvement Projects(FIP)」を進めていく。FIPにおいて、同社は既存の漁業習慣を変えるために、持続可能な漁獲高の徹底、環境負荷の低減、漁業マネジメントの改善などを行う。
タイ・ユニオンはさらにサプライチェーンの透明性確保の分野にも投資を実施していく。サプライチェーンをトラッキング(追跡)するためのITシステムの開発や体制づくりを進めていき、漁業事業者の違法漁法を監視するだけでなく、漁業の労働者人権の観点でも監視を強めていく。また、まぐろ調達では、国際水産物持続財団(ISSF)の登録制度であるProActive Vessel Registerに登録されている漁船以外から調達しないことも宣言した。国際水産物持続財団(ISSF)は、まぐろ加工業者、科学者、国際環境NGO世界自然保護基金(WWF)の連合体で、ProActive Vessel Registerに登録した漁業事業者は、毎年ISSFから漁法、環境への取組、トレーサビリティ、公海上でのまぐろ漁業等に関する監査を受けることになる。タイ・ユニオンはさらに、漁業資源の適切な管理に関する科学調査にも取り組んでいく。
世界の漁業大国であるタイについては、漁業事業者の環境や人権に関する取組が遅れていることが世界的に大きな問題となっている。ESGリスクコンサルティングRepRiskの調査でも、世界最大の「強制労働」従事国はタイだとされ、対策が求められていた。今回、タイ有数の大手企業であるタイ・ユニオンがまずまぐろ漁業で対策に乗り出した意味は非常に大きい。
【参考】食品、建設、アパレル企業は奴隷労働との関連性強い。RepRisk特別報告書(2016年5月9日)
【参照ページ】Thai Union commits to 100% sustainable tuna
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