米環境保護庁(EPA)は12月13日、シェールガス、シェールオイル、地熱発電などで活用される水圧破砕が国内の飲料水資源に与える影響についての調査をまとめ発表した。報告書では、特定の条件や環境下で水圧破砕が飲料水資源に深刻な悪影響を及ぼしうると結論づけた。報告書では、科学的根拠に基づく調査から、その特定の条件と環境についても発表した。
今回の報告書は米国政府が発表する水圧破砕と飲料水資源の関係に関するものとして最も包括的なもの。水圧破砕を5段階に分け、各段階における影響を分析した。5段階は、(1)水圧破砕用の水の確保、(2)水と化学物質を混ぜた破砕流体を組成、(3)破砕流体の掘削井戸内への高圧注入と割れ目の組成、(4)掘削井戸からの廃液回収、(5)廃液処理または再利用。各段階での影響は、主に井戸周辺地域で見られ、飲料水への影響には、一時的なものから深刻な水質汚染まで様々なものがある。
特に飲料水資源への影響が深刻となりやすい条件、環境では、(1)水資源、特に地下水が不足している地域または時期、(2)破砕流体取り扱い時の化学物質や流体の漏れ、それによる地下水の汚染、(3)水圧破砕中の設備の不適切な利用よるガスや廃液の漏れ、それによる地下水の汚染、(4)破砕流体の地下水への直接流入、(5)廃液の不適切な処理による地表水の汚染、(5)廃液の不適切な処理または保管による地下水の汚染、の5つを挙げた。
同時にEPAは、調査にあたり、地域レベルや国レベルで水圧破砕の環境影響を調べるために必要なデータが大きく不足していることも指摘。そのため、
今回の報告書は、1,200本以上の科学論文や調査をもとに分析を行った。調査段階では、州政府、先住民保護区、産業界、NGO、学術界、市民から幅広い協力も得た。今後も必要なデータや情報の収集を継続し、科学的調査の質を上げていく予定。EPAはこの段階では、法整備の姿勢などを示していないが、今回特定された条件、環境に係る事業者には、大きな配慮が求められる。
余談だが、米国と欧州では環境法規性に関する考え方の大きな違いがある。欧州では、客観的科学的根拠が不十分であったとしても、潜在的な危険性が社会的に懸念される場合には法規制をかけてしまう「予防原則」という考え方が普及しており、EUが欧州の多くの国ではこの原理に基づく環境法規制がかけられている。一方、米国では、特に連邦政府レベルでは、この「予防原則」を用いることには非常に慎重で、客観的科学的根拠が確実に証明されたから環境法規制が制定される。現在EPAは、水圧破砕が飲料水資源に与える影響の客観的科学的根拠を立証するために調査している段階にいる。
【参照ページ】EPA Releases Final Report on Impacts from Hydraulic Fracturing Activities on Drinking Water
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