世界最大の熱帯雨林地帯を抱えるブラジルが、再び森林破壊の危機に瀕している。ブラジル政府は11月29日、衛星画像を用いた調査の結果、2016年のブラジル国内のアマゾン地域の森林面積が昨年より29%も減少していたことを発表した。この森林減少の増加率は2008年以降、最悪の上昇率。
ブラジル政府は近年、気候変動の抑止と生物多様性の保全、先住民族の権利保護の一環としてアマゾン流域の森林破壊の抑制に取り組んでいた。2008年には10,000km2だった森林減少面積は、その後大きく減少し、以後は7,500km2以下に抑えられていた。それが2015年に突然急増し、2009の7,464km2を超える7,989km2(東京都の約3.6倍)となったのは、同政府にとって予期せぬ結果となった。
(出所)NPR
この急激な悪化は、昨今の森林法の規制緩和と土地の投機的利用により違法伐採が進んだ結果だと専門家は考えている。依然ブラジル国内では違法伐採が広範に行われており、森林の荒廃と消失が引き起こされている。牛肉や大豆のような日常的農作物の栽培に伴う森林破壊の抑制策は実施しているものの、不法で無計画な農地への転用は後を絶たず、同国で深刻な問題となっている。調査では、2000年から2012年の間の森林破壊のうち、68%から90%は違法伐採が原因としている。
また、違法伐採を監視する環境保護活動も危険にさらされている。2012年以降、この地域で違法行為と闘っていた環境保護活動家が少なくとも150人殺害された。先住民も同様に、違法伐採者による居住地侵入の脅威にさらされており、極めて危機的な状況であるという。またブラジル林業産業への悪影響も大きい。林業は2012年時点で同国GDPのおよそ5%を占める大きな産業。様々な規制や租税を回避する違法伐採は、正規品と比べ最大40%安い価格で取引されており、同国の正規林業市場は壊滅的な打撃を受けている。
このような事態を前に、ブラジル政府は新たな対策を打ち出した。まず、政府が私有地に対しても指定できる環境保護強制区域を特定するための公開オンライン・データベース「SICAR」を11月29日に発表。SICARを用いることで、国内の土地利用の透明性を高め、地獄可能な農業生産の確立への寄与が期待されている。また、違法行為を犯した政治家や実業家の訴追や収監も強化。この不正撲滅策は功を奏してきているという。さらに、荒廃した森林や農地22万km2の熱帯雨林復元政策も発表した(1970年以来の累積森林減少面積は約30万km2。世界の温室効果ガス排出量の約17%は熱帯雨林の伐採に起因すると言われており、ブラジル政府は、熱帯雨林違法伐採対策を進めることで温室効果ガス排出量の削減も狙う。
国際環境NGOのWorld Resource Institute(WRI)は、森林保護の法規制が正しく実行されれば、野心的なこの熱帯雨林復元政策も成功するだろうとの見解を示した。さらに、官民連携はアマゾン地域の法的執行強化に不可欠で、環境保護官の訓練と安全確保、ならびに雇用維持のための十分な資金調達が、アマゾン流域を森林破壊から守る解決の糸口であると訴えている。さらに、メディアの役割にも注目しており、メディア向けの情報サイト「Global Forest Watch」を無料で提供。広大なアマゾンのどこで森林破壊が行われているかを正確に知ることができる。
その他にも、第三者機関が運営する衛星監視システムを駆使した情報の透明性向上も行われている。環境NGO、ImazonのSADシステムでは毎月、メリーランド大学のGLADシステムでは毎週、登録利用者に最新情報をメールで配信している。また、企業がサプライチェーンでの努力を通じて違法伐採を削減することも可能で、BVRio Environmental Timber Exchangeというシステムを用いることで、木材取引業者は購入製品に違法木材が含まれていないかを確認することができる。これらのIT技術によって、政府機関は材木種の特定、違法な材木ロンダリングを防ぐ林産物のトレーサビリティの強化が可能となったきており、サンパウロ州公共調達ポリシー(Cadmadeira)や米国レーシー法、EU木材規則などが、企業に違法木材の取引を禁止する規制を課している。
【参照ページ】PRODES estima 7.989 km2 de desmatamento por corte raso na Amazônia em 2016
【参照ページ】Brazilian Government Announces 29 Percent Rise in Deforestation in 2016
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