戦略コンサルティング世界大手マッキンゼー・アンド・カンパニー(マッキンゼー)は11月22日、ESG投資のひとつであるインパクト投資の最新の動向と現状に関する見解を発表した。マッキンゼーによると、インパクト投資への投資金額は増加している一方、依然として構造的な問題を抱えているという。
インパクト投資は、財務リターンだけでなく、社会や環境へのプラスのインパクトを創出する投資手法として約10年前に誕生。インパクト投資では、慈善団体と投資家連携するという画期的な枠組みが話題を呼び、今日では770億米ドル以上の投資運用残高を誇っている。インパクト投資を実施している著名な金融機関には、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、ブラックロック、ベインキャピタルなどがある。
一方では課題も多い。インパクト投資を実践するファンドマネージャーにとって、大規模な資金需要を持つ投資先を探す出すのは至難の業だ。インパクトの分野も多岐にわたり、業種も様々のため、そのような企業の企業価値を計算することもまた難しい。アセットオーナーにとっても、インパクト投資の目的を定義しづらくなっている。インパクト投資の案件には、通常の投資先と同等のリターンをより低いリスクで実現するものから、市場平均並みのリターンを追求できれば良しとしているものもある。
マッキンゼーは、インパクト投資のあるべき姿を描くため、世界で最もインパクト投資が発達していると言われる英国でのファンドマネージャーへのインタビューを実施。そこから見えてきたポイントをまとめている。インパクト投資は、理想としては、政府の助成金や税控除がなくても従来型の企業と同程度のリターンを生み出すことが求められているが、それまでの間は政府の支援が鍵となる。英国では、休眠口座や大手銀行からの拠出で政府主導の「Big Society Capital」を組成。このファンドをマーケット情報交流のためのプラットフォームとするとともに、シードマネーを提供する役割を果たしている。
2つ目のポイントは、インパクト投資の定義を明確にしていくことだ。現状ではインパクト投資の目的が曖昧で、ベンチマーク以上のリターンを求めることを謳うものもあれば、財務リターンが低くとも社会的リターンを重視することを謳うものなど様々ある。同様に、インパクト投資の商品もより業種や地域、テーマに特化していく必要があるという。地域やテーマを明確にすることで、投資家はどのインパクト投資ファンドに資金を投じるべきなのかがわかりすくなり、インパクト投資全体の活性化につながる。さらにインパクト投資ファンドマネージャの専門性不足も大きな課題。特に経歴の浅いファンドマネージャーは企業価値評価や財務モデル作成が稚拙なことが多く、投資家にとっての大きな障壁をなっているという。
これらの課題を克服していくため、マッキンゼーは、インパクト投資の測定方法を確立していくことや、投資家ニーズに沿ったインパクト投資分野の選択と集中を提唱している。また、ファンドマネージャーへの教育や社会起業家への教育なども欠かせないとした。
【参照ページ】How impact investing can reach the mainstream
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