任期満了が近いオバマ政権は11月18日、北極海地域にある米国領大陸棚での石油とガス採掘を来年から5年間禁止することを決めた。今回の措置は、連邦政府の米国外部大陸棚(OCS: Outer Continental Shelf)を含むオフショア地域の開発管理を担当する内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)の「米国OCS石油・ガスリース・プログラム」の一環。OCSとは、国際法で認められた米国領の大陸棚でありながらも、どの州にも属していない地域で、連邦政府の内務省が管理している。内務省は「石油・ガス・リースプログラム」のもとで資源採掘の許認可を行っており、今回2017年から2022年まで5年間の開発計画の許認可の審査が進んでいたが、同地域での開発許可を出さないことを決めた。
北極圏が化石燃料の関心を集めているのは、石油やガスが豊富にあると目されているから。北極海の氷は温暖化で急激に溶けており、採掘装置(リグ)の設置が容易になっている。この地域には採掘可能な石油が約900億バレル、全世界の30%のガスが手つかずに埋蔵されていると言われている。北極海域では、アラスカ州を持つ米国、カナダ、ロシア、グリーンランドを領有するデンマーク、ノルウェーが領有権を持っている。
内務省は、今回の決定の背景について、北極海域であるチュクチ海やボーフォート海での採掘を許可すれば、環境に対する脆弱性やユニークな特性をもつ北極のエコシステムが重大な危機に曝されると説明。さらに、北極海域での探査には膨大な費用がかかり、採算に見合わないという見方も示した。実際にロイヤル・ダッチ・シェルは、過去この海域での石油・ガスの探査のための試掘井建設に70億米ドル(約8,400億円)以上を注ぎ込んだが、膨大な費用と環境団体の激しい抵抗により2015年9月に撤退している。
今回のオバマ政権の決定は、石油・ガス産業の活性化を図りたいトランプ次期政権への大きな置き土産となった形だ。仮にトランプ次期政権がこの政策を覆そうとしても、環境関連の書類作成等、一連の手続きが必要で、数年間はかかるという。
一方で内務省は、メキシコ湾沿岸の10カ所とアラスカ沿岸の1カ所での開発計画に対してはゴーサインを出した。このことに対して、環境団体からは批判が出ている。
【参考ページ】Obama puts Arctic Ocean off limits for drilling in last-ditch barrier to Trump
【参考ページ】On its way out, Obama administration moves to slam the door shut on Arctic drilling
【内務省発表】Five-Year Outer Continental Shelf (OCS) Oil and Gas Leasing Program
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