サステナビリティ分野の国際アドボカシーNGOのCeresと国連責任投資原則(PRI)は11月11日、牛肉、大豆、木材製品の生産増加により世界的に蔓延する森林破壊の問題に対処するため、新たなパートナーシップを締結したと発表した。両者は、森林破壊や、サプライチェーンによる強制労働および土地権利紛争など関連する他の問題で食品メーカーや木材企業にプレッシャーを与える世界の機関投資家を後押しするため、共同で新たに投資家グループを立ち上げる。活動地域は森林破壊が深刻な南米地域に当面フォーカスする。
今回の提携は、COP22マラケシュ会議内の投資家イベントで発表された。森林破壊はCOP22での主要トピックでもあり、人間活動により年間約1,200万ヘクタールの森林が破壊されていることが同イベントで明らかにされた。世界的な森林破壊を加速させている最大の要因は牛肉。肉牛を放牧するために、南米では年間270万ヘクタールの熱帯雨林が破壊されている。新規開拓された畑からの大豆購入を禁止する大豆畑開発凍結協定(大豆モラトリアム)により、ブラジル・アマゾン流域では大豆主導の森林破壊が劇的に減少しているが、マメ科植物の栽培による森林破壊は依然として主要因のまま。背景には、世界的な肉・乳製品の需要の高まりにより、大豆の生産量が過去20年間で2倍になっているためだ。
【参考】アマゾンの森林破壊が急速に悪化。サバンナ化の可能性も
セリーズとPRIが新たに立ち上げるグローバル投資家グループの活動内容は、(1)牛肉、大豆、木材企業の調達方法およびその影響が正当であるか評価する指標の位置づけおよび開発(トレーサビリティ、サステナビリティの目標および方針、透明性、証明制度の遵守等)、(2)メーカー50社から60社に対しこの指標でのベンチマークを実施、(3)低スコアの企業に対し、サステナブルな調達方針の採用を勧告するためのエンゲージメントや議決権行使を実施、(4)国家および国際レベルで政策アドボカシー団体へのエンゲージメントを実施、の4項目。
セリーズの発表によると、ニューヨーク州退職年金基金や運用会社大手ロベコが、すでに今回の投資家グループ入りに関心を示している。ニューヨーク州退職年金基金はこれまでにパーム油の調達において、ダンキンドーナツ、コナグラ・フーズ、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドなどに対してエンゲージメントを行い、森林破壊を伴わない調達方針の制定を成し遂げてきた実績がある。同年金基金は、制定を拒否したドミノ・ピザに対して株主総会にまで話を持ち込んで株主提案を行い、議決権26.2%を獲得するまでにも至っている。
【参考】ニューヨーク州退職年金基金、サステナビリティ投資を50億米ドルへ
今回投資家グループ設立は、セリーズの他、持続可能な開発のための経済人会議(WBCSD)、世界自然保護基金(WWF)、インテル創業者が設立したゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団が加わっている環境保全・金融市場協働プログラムの一環で、ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団が資金を提供する。
【参照ページ】Ceres and the PRI Join Forces to Tackle Tropical Deforestation
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