世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は10月31日、利払い(クーポン)を現金とカーボンクレジットのどちらかまたはその組み合わせで受け取ることを選択できる森林債(Forest Bonds)」を発行した。カーボンクレジットでの利払いを選択できる債券としては世界初。発行額は1億5,200万米ドル(約165億円)。償還期間は5年。債券格付はAAA。金利1.546%または同等のカーボンクレジット。森林債は一般的にはグリーンボンドの一種だが、IFCは今回調達資金の使途を発展途上国での民間セクター育成や森林保全など幅広く想定しており「グリーン」には限定しないため、グリーンボンドとは位置づけてはいない。
発行された債券は、カリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)、グリーン投資ファンドのTreehouse Investments、米国大学教職員退職年金/保険基金(TIAA)、オーストラリア保険大手QBE等、世界大手の機関投資家が購入した。同債券はロンドン証券取引所に上場予定。
世界では今日、毎年コスタリカの面積と同等の550万ヘクタールもの熱帯雨林が消失していると言われており、IFCは気候変動対策とそれに貢献する森林保全分野への投資を活性化させる取組を加速中だ。IFCは、過去10年間で発展途上国での森林保全に130億米ドル(約1.4兆円)の投資をしてきているものの、同分野には今後10年間でさらに750億米ドル(約8.2兆円)から3,000億米ドル(約32兆円)の投資が必要だと見積もっている。そのためIFCは、今後2020年までに130億米ドル(約1.4兆円)の民間資金を同分野に呼び込んでいくことをコミットしている。とりわけ注力しているのがグリーンボンドの発行で、IFCの発行累計額はすでに56億米ドル(約6,100億円)に上る。
カーボンクレジットで利払いを行うためのスキームはとてもユニークで、今回新たに開発された。まずIFCは利払いのためのクーボンクレジットを超タウするため、2008年より国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、国連食糧農業機関(FAO)が共同で実施している「UN-REDD」プログラムのスキームを活用し、ケニア南部の「カシガウ回廊REDD+プロジェクト」から発行されるカーボンクレジットを購入する。「カシガウ回廊REDD+プロジェクト」は、2010年に民間企業が主導して開始されて30年間のプロジェクトで、ケニア北部の私有林、コミュニティ農場やコミュニティ信託地からなる約20万ヘクタールをプロジェクトエリアとしている。2011年からはREDD+由来の世界初のカーボンクレジットが発行されたことで話題を呼んだ。カーボンクレジット利払いを受けた投資家は、このクレジットを通じて自社の温室効果ガス排出量を相殺することもでき、また排出権取引市場で売却・現金化することもできる。
一方、現金利払いを選択した投資家に対しては、IFCは「カシガウ回廊REDD+プロジェクト」から購入したカーボンクレジットを資源採掘世界大手BHPビリトンが買い取ることで現金化し、投資家に現金を支払う。すなわち、BHPビリトンがこの債権スキームのオフテイカー(引き取り手)の役割を果たす。
今回のユニークな債券スキームは、IFCとBHPビリトン、国際環境NGOコンサーベーション・インターナショナル(CI)が共同で開発。コンサーベーション・インターナショナル(CI)が、プロジェクトのREDD+適格基準に関するアドバイスを行う。また、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、BNPパリバ、JPモルガンが募集代理人を務めた。また、経理、支払等の受託会社はシティバンクが務める。
【参照ページ】IFC Issues Innovative $152 Million Bond to Protect Forests and Deepen Carbon-Credit Markets
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