EUの政策執行機関である欧州委員会は10月28日、同委員会が推進する「Capital Markets Union(資本市場同盟)」プログラムの一環として、持続可能な金融(Sustainable Finance)分野の諮問機関「持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)」を設置する欧州委員会決定(Comission Decision)を発表した。EUは現在、2019年までにEU域内の金融市場を統合していく「資本市場同盟」プログラムを検討、推進している。今回設置されるグループは、持続可能な金融の分野での検討を行い、欧州委員会に対して内容を提案していく。EUは同グループの委員を、機関投資家、金融関係者、NGO、専門機関など幅広く募集しており、委員応募の締切は11月25日。欧州委員会の金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局(DG FISMA)が委員の中から委員長を選ぶ。
同グループは、パリ協定や国連持続可能な開発目標(SDGs)といった国際的な動きを念頭に置き、気候変動、環境悪化、その他サステナビリティ関連課題に金融分野が貢献するためのEU政策を検討していく。また同グループは、環境やサステナビリティ関連で国際的な議論を行う会議体であるG20グリーンファイナンススタディグループ、金融安定理事会(FSB)の気候変動関連情報に関する財務情報開示に関するタスクフォースなどとも歩調を合わせていく。最終的には2017年末までにEU金融政策の包括的ロードマップを欧州委員会に提出する。
この動きに呼応し、気候変動分野で活動を行う民間の諸機関で結成したコンソーシアムは同日、欧州での環境投資を促進するための提言書「A Sustainable Finance Plan for the European Union(EUの持続可能な金融計画)」を共同で発表し、EUが実施していくべき政策ロードマップを提示した。このコンソーシアムに加わっているのは、グリーンファイナンスを推進する投資家グループ2℃ Investment Initiative、Eurosif、Climate Bonds Initiative(気候債券イニシアチブ)、ShareAction、責任投資コンサルティング会社Ario Advisory、国際環境NGOのCarbon Tracker、Climate Disclosure Standards Board(CDSB)、WWF、Preventable Surprises、Future-Fit Foundation、E3G、持続可能な金融を推進する法律家団体ClientEarth、大学機関からはオックスフォード大学サステナブル・ファイナンス・プログラムの計13機関。
コンソーシアムが提言するロードマップは、持続可能な金融分野を「持続可能なインフラへの投資」「責任投資」「気候変動情報開示」の3つを柱とし、提言内容をまとめている。提言の中には、EUの金融政策をEU環境政策や気候変動政策と整合性のあるものにする、持続可能なインフラ分野への資金調達を促進する計画を盛り込む、EU域内共通のグリーンボンド定義を定める、アセットオーナーにはESG投資を行う受託者責任があるということを明確にする、受託者がアセットオーナーに対してESG投資を運用方針とするよう求める機会を義務付けることを法制化する、などがある。また、誕生したばかりの「持続可能な金融についてのハイレベル専門家グループ(HLEG)」に対してもこれらの提言に耳を傾けるよう要求している。コンソーシアム参加機関からも、専門家グループの委員となるところが出てくると見られる。
【参照ページ】European Commission establishes an expert group to develop a comprehensive European strategy on sustainable finance
【参照ページ】Plan launched to tackle European investment crisis
【欧州委員会決定】COMMISSION DECISION
【EUプログラム】Capital Markets Union
【コンソーシアム提言書】A Sustainable Finance Plan for the European Union
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