ドイツの投資コンサルティング企業SD-M(Sustainable Development Management)は9月23日、第2版となる「SD-KPI(Sustainable Development Key Performance Indicators)STANDARD 2016-2021」を発表した。SD-KPIは、業種ごとに投資家視点でマテリアルとなる項目を特定したガイドライン。GRIがG4で企業にとって重大な影響を与える(これをマテリアルと言う)情報を特定し開示するよう企業に求めているが、SD-Mは2009年に当時のドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省(現在のドイツ連邦環境・自然保護・建物・原子炉安全省)と協働して、企業が開示すべき情報を特定した自主的なガイドライン「SD-KPI STANDARD 2010-2025」を2009年に作成した。言わばドイツ政府公認の非財務情報開示ガイドラインだ。それから5年が経過し、今回第2版が発表された。現在は英語版のみだが、今年中には中国語版と日本語版も発表される予定。
「SD-KPI STANDARD 2016-2021」でのポイントは、米国で同様の取組をしてきたSASBが共同作成メンバーとして加わった点にある。SASBは、今年3月に10分野79業種で情報開示すべきマテリアルな項目の特定を完了。「SD-KPI STANDARD 2016-2021」は、SD-M、ドイツ連邦環境・自然保護・建物・原子炉安全省、SASBの3者が検討主体となり、初版の「SD-KPI STANDARD 2010-2015」の要素50%、SASBが作成した「サステナビリティ会計基準」の要素50%を織り込んだものとなった。「SD-KPI STANDARD 2016-2021」は、10分野68業種でそれぞれ概ね3つのマテリアル項目を特定し、さらに項目ごとのウェイトも示されている。SASBが1業種あたり5から10のマテリアリティ項目を特定しているのに対し、SD-KPIは3項目と大きく絞っているのが特徴。
SD-Mは、「SD-KPI STANDARD」をより実務に使いやすくするための仕組みも整備している。まず、ESG調査・分析企業でボストンに本社を置くサステナリティクス(Sustainalytics)と協働で世界4,300以上の企業を「SD-KPI STANDARD」に照らして評価した結果を、同社のSD-KPInventory®サービスを通じて、アセットオーナー、運用会社など機関投資家や、格付機関などに提供している。また、スイス・チューリッヒに本社を置くインデックス開発大手STOXX社と共同で「EURO iSTOXX 50 SD-KPI」「iSTOXX Europe 50 SD-KPI」の2つの株価指数を2013年9月に、「iSTOXX Europe 600 SD-KPI」を2016年4月にリリースし(総称「iSTOXX® SD-KPIndex® family」)、すでに運用会社などに提供している。例えば、「EURO iSTOXX 50 SD-KPI」は2013年9月から今年9月までの3年間のパフォーマンスで、ユニバースである「EURO iSTOXX 50」指数より9ベーシスポイント(0.09%)上回っていた。
2014年に非財務情報の開示を義務化したEUも、目下、同様の業種ごとの情報開示ガイドラインを作成中で、今年12月6日までに発表することが決まっている。注目されるのはやはりSASBの勢いだ。本来は米国国内市場向けにガイドラインを作成してきたSASBは、投資家にフォーカスしたことが功を奏し世界中の機関投資家から注目されている。ドイツで作成された今回の「SD-KPI STANDARD」にもSASBの要素が色濃く反映された。ドイツはEUに対して大きな影響力を持つとも言われており、間もなく公表されるEUの業種別情報開示ガイドラインにもSASBの成果が反映されそうだ。
【参照ページ】SD-KPIs
【ガイドライン】SD-KPI STANDARD 2016–2021
【インデックス】EURO ISTOXX® 50 SD-KPI INDEX
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