UNESCO(国連教育科学文化機関)の政府間海洋学委員会(IOC)は7月14日、世界の公海及び大規模海洋生態系(LME)で海洋資源が大きな危機に瀕しているとする調査結果を発表した。世界の6割のサンゴ礁は地域社会によって絶滅の危機があり、気候変動の影響も加わって2030年までには9割のサンゴ礁が絶滅の恐れがある。また、ほぼ全ての大規模海洋では過去数十年において水温上昇が観測されており、約半数種の水産資源では乱獲が行われている統計が発表され、驚異的な内容となった。
今回の調査結果は、地球環境ファシリティ(GEF)から資金が提供されている国際プロジェクト「国際越境水域評価プログラム」(TWAP)一環として公表された。「国際越境水域評価プログラム」では、5つの主要な越境水域システム(湖沼、河川、地下水、大規模海洋生態系、外洋)を地球規模でアセスメントし、それぞれの水域システムごとに人間社会の影響に対する脆弱度をランク付けしている。今回の調査は、そのうち、大規模海洋生態系と外洋に関する調査をまとめたもので、国際機関や各政府の政策立案者に対し、政策決定の適確な優先順位付けを促すことを目的としている。外洋や大規模海洋生態系が人間社会にもたらしている恩恵は非常に大きい。大規模海洋生態系だけでも、水産資源や観光資源などからの経済価値は年間28兆米ドルに上る。報告書は、気候変動や人間社会の活動が海洋生態系に大きな影響を与え続けていると伝え、特に乱獲と海洋汚染が大きいとした。さらに、国際レベルでの統一的な海洋ガバナンスの仕組みが欠けていることが、海洋生態系の悪化を加速させているとした。
今回の調査結果にもとづいて、IOCは、UNEP(国連環境計画)と共に調査結果の要約版、完成版など複数資料を公開した。資料では、2030年と2050年の2つの期間を設け、海洋生態系に与える諸々の危機をまとめた。これまで水産資源の管理に関しては、絶滅危惧種のみを対象とした漁業規制がほとんどで、海洋生態系全体に関する国際的な仕組みは整備されてこなかった。報告書では、国際的な海洋ガバナンスの必要性を深刻に提言していることから、今後、包括的な国際海洋資源管理の議論が開始される可能性が高い。
【参照ページ】New global data on High Seas and Large Marine Ecosystems to support policy makers
【プロジェクト】国際越境水域評価プログラム(TWAP)
【機関サイト】UNESCO
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