自然資本分野における国際基準作りを進める自然資本連合(NCC)は7月26日は、7月13日に発行した初版「自然資本プロトコル」の策定にあたり、昨年10月から今年2月までかけてプロジェクト参加企業が実施した「パイロットプログラム」(正式実施前の試行プロジェクト)の結果をまとめた報告書「Business Insights: Pilot testing the Natural Capital Protocol」を発表した。この報告書では、パイロットプロジェクト企業が重点を置いたビジネス領域や、プロトコルの実践的な活用法なども記載されている。報告書は、プロトコル作成にも関わった英ケンブリッジ大学サステナビリティ・リーダーシップ研究所が参画企業へのヒアリングを基にまとめた。
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パイロットプログラムに参加したのは、関与度の高い「Deep dive pilots」参加10社と、関与度の低い「Pilots」25社。自然資本プロトコルには全部で10ステップが定めれられているが、そのうち全てのステップでの試行が課せられた「Deep dive pilots」に参加したのは、コカ・コーラ、ダウ、ヒューゴ・ボス、ケリング、ナチュラ、ロシュ、ネスレ、ネスレネスプレッソ、シェル、オラム・インターナショナル。「Pilots」には、フィリップス、LVMH、H&M、アクゾノーベル、ジャガー、ノバルティス、タタ、セメックスなどが参加した。このように、パイロットプログラムには、ほぼすべての業種で実施された。報告書の中で、参加企業のうち60%が「自然資本分野におけるステークホルダーとのエンゲージメントや対話を自信を持って行えるようになった」とコメント。また、サプライチェーンや調達において自然環境が企業に与える影響の重要性にさらに気づくことができたと話した。
自然資本プロトコルで定められた10ステップは、目標設定、アセスメント対象設定、影響測定、実行など一連のプロセス全体に渡り、今回のパイロットプログラムにおいても、参加企業の55%がプログラム実施に当たり外部専門家を招聘した。また、約70%の参加企業は、プログラム実施において、役員レベルまでも関与する大規模なものとなった。取組範囲では、自然資本プロトコルの10ステップを、企業全体で実施したところもあれば、プロジェクト単位や事業所単位、また製品単位などで実施したところもあり、プロトコルの活用方法は様々なレベルで利用できるとういこともわかった。実施内容としては、新たな事業機会のアセスメント、リスクアセスメント、環境基準をもとにした調達元などのスクリーニングが他の比べ実施企業数が僅かに多かったが、それ以外にも資産価値評価、選択肢評価、事業計画、情報開示、ブランド戦略などを実施した企業も多く、企業活動の様々な分野で適用できることもわかった。
パイロットプログラム参加企業から概ね肯定的な評価を得られた自然資本プロトコル。参加企業の70%は、「他社も一度活用してみたらいいと思う」というお墨付きも与える結果ともなっており、日本企業の中からも積極活用する企業が出てきそうだ。
【参照ページ】Business Insights: Pilot testing the Natural Capital Protocol
【報告書】Business Insights: Pilot testing the Natural Capital Protocol
【機関サイト】Natural Capital Coalition
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