米国で遺伝子組換え(GMO)食品のラベル表示義務化法案「GMO Labeling Bill(GMO表示法案)」が成立した。「連邦食品・医薬品・化粧品法」で食品と定義される幅広い品目について、遺伝子組換え食品を含有する商品全てに対して、遺伝子組換え食品であることをわかる表記を記すことを義務化する内容。7月7日に63対30で上院を通過、7月14日に306対117で下院を通過し、7月29日にオバマ大統領が署名、法案が成立した。遺伝子組換え食品への抑制が趣旨のように見える今回のGMO表示法だが、現在遺伝子組換え食品に反対を唱える関係者から今回の法律に対して大きな批判の声が上がっている。
GMO表示法で決まった内容は主に3つ。まず、農務省に対して、全米統一基準の表示ルールを制定することを命じた。今後、農務省は、遺伝子組換え食品と認定される遺伝子組換え品の含有量など詳細ルールを決定する。そして、食品メーカーに対しては、遺伝子組換え商品のパッケージに、(1)農務省が定める「遺伝子組換え食品」マークを表示する、(2)遺伝子組換え食品であることを示す文言を表示する、(3)遺伝子組換え食品であることを示すウェブページへのリンクを示すQRコードを表示する、の3つの選択肢のうちいずれかを選択しなければならない。中小企業に対しては、遺伝子組換え食品であるこを示すURLや問い合わせ窓口の電話番号のみの表示でも可とするオプションを用意した。そして、全米各州や他の行政当局に対しては、独自にGMO表示ルールを定めることを禁止し、現行の各州のルールも無効化させた。この中で大きな批判が集まっているのが、QRコードの表示でも構わないとした点にある。
QRコードは、スマートフォンなどを通じて、コードを読み取り、リンクへ遷移した後に初めてその内容がわかる。そのためQRコードを見ただけでは、そのコードが何を意味しているかわからず、まして遺伝子組換え食品を示すものであることには気づかない。このような「大きな抜け穴」が盛り込まれている法律に対し、複数の民主党員は大きな反発を示し、消費者の立場に反する法案だとしている。また、反対派からは、今回の法案が「アメリカ人の知る権利を否定する法律」であるとして強く非難している。一方で、複数の共和党員らは、遺伝子組換え食品は安全であると主張する科学の勝利だと今回の法律を歓迎している。
米政府当局からも今回の法律に対し否定的な声が上がっている。連邦保健福祉省の下部組織、米食品医薬品局は、高度精製食用油であるキャノ―ル油や高果糖のコーンシロップ等は製造過程を経ることで遺伝子操作された原材料について表示を課す現行法が無効化されることで、大きな後退となってしまうと危惧を露わにしている。米食品医薬品局は、GMO表示法案の審議中にも、明確さを欠く表示ルールであると異議を唱えていた。バーモント、コネティカット、メーン、アラスカの4州が現在設定している遺伝子組換え食品ラベル州法も同様に無効化された。
現在、キャンベル、ゼネラル・ミルズ、マーズ、ケロッグ等の大手食品企業は、遺伝子組換え食品の自主的表示ルールを実行しているが、今回のGMO表示法をどのように解釈し、どのような対応を取るのか。各企業の対応に焦点が集まっている。
【参考ページ】Bill to Create Federal GMO Labeling Standard Sails Through House
【参考ページ】Food and Drug Administration Strongly Criticizes Stabenow/Robert Draft GMO Labelling Bill
【参考ページ】FDA Denies Petition for GMO Labeling
【法案】GMO Labeling Bill
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