米オバマ大統領は6月22日、化学物質の規制を強化する法案「Frank R. Lautenberg Chemical Safety for the 21st Century Act」(米政府が用いている略称は、「ローテンバーグ化学安全法」に署名し、同法案が成立した。米連邦政府の化学物質関連法としては、これまで1970年代のフォード政権下で成立した「有害物質規制法(TSCA)」があったが、環境規制当局の監督権限が小さく、化学物質規制強化を求める声が上がっていた。今回の「ローテンバーグ化学安全法」はTSCAに取って代わる法律として、6月初めに与党・民主党と野党・共和党が連携して連邦上院と連邦下院を通過、大統領に送られていた。今回の規制に該当するものは、洗剤、衣類、研磨剤、染料希釈剤、自動車部品などほぼ全ての日常製品に及ぶ。
「ローテンバーグ化学安全法」によって権限を強化された米環境保護庁(EPA)は今後、アスベスト、ホルムアルデヒド、難燃剤など、これまで健康被害を指摘されつつも対策に乗り出せていなかった少なくとも10の化学物質について化学的調査に着手する。調査の後には、化学物質のリスク評価を行い、基準値など規制を設定、基準値を超える不測の事態が発生した場合には直接行政権限を発動する権限も与えられた。これらにかかる行政コストは、新規化学物質に関する企業からの調査依頼や報告書の提出時に、企業に対して課金徴収する権限もEPAに与えられた。また、同様に規制強化が求められていた「難分解性、生体蓄積性、毒性(PBT)化学物質」に対しては、詳細なリスク評価をせずとも規制をかけられる「ファストトラック制度」も設けられた。さらに、EPA規制と矛盾する州法を無効化できるという条項も盛り込まれた。
米国化学品製造社協会(SOCMA)は、今回の規制強化を歓迎、米国製の日常品に対する社会の信頼を取り戻すことができると高く評価している。一方、環境関連団体からの評価は真っ二つに分かれており、SOCMAと同様高く評価する団体がある一方、EPAに規制に関する予算が限られている点やEPAのリスク評価期間中は当該化学物質に対する州法の規制が停止されてしまう点などを指摘し、不十分な内容だと批判する関係者もいる。
欧州のREACH規制や日本の化学物質審査規制法に比べ、米国では化学物質規制対策が大幅に遅れていたが、今回の法案成立により、遅れを取り戻す権限がEPAに与えられた。今後EPAが設定していく具体的な規制に注目が集まる。
【参照ページ】The Frank R. Lautenberg Chemical Safety for the 21st Century Act
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