英国を代表する国際空港のヒースロー空港は5月3日、英国に拠点を置く世界的な非営利環境企業カーボントラスト社より、同社が発行している5つの環境関連認証のうち4つの認証を獲得したと発表した。同時に4つの認証を獲得した空港としては世界初。また、サプライチェーン認証を獲得した機関としては世界で5番目、空港としては世界初。空港の環境性能として世界をリードしている状況が明らかとなった。
カーボントラストは、英国の環境・食料・農林地域省(DEFRA)が出資して設立された保証有限責任会社(英国およびアイルランド法での有限責任会社の形態の一つ)。環境改善に関する技術提供に加え、企業が排出する二酸化炭素や水、廃棄物に関するフットプリントを計測し、英国での共通規格PAS2050やCode of Good Practiceの基準に照らした審査および認証提供を実施ている。英国認証機関認定審議会(United Kingdom Accreditation Service)からもISO14065の認定を受けている。カーボントラストが提供している認証には、以下の5つがある。
- 二酸化炭素基準:自社の二酸化炭素排出量の削減状況
- 水資源基準:自社の水資源使用量の削減状況
- 廃棄物基準:自社の廃棄物削減状況
- サプライチェーン基準:サプライチェーン上の二酸化炭素排出量の削減状況
- 製品フットプリント認証:製品ライフサイクル全体の二酸化炭素排出量・水使用量が優れた製品に与えられるラベル認証
今回ヒースロー空港が獲得したのは、二酸化炭素基準、水資源基準、廃棄物基準、サプライチェーン基準の4つ。同空港がサステナビリティに注力している背景には、2014年5月に自ら設定した"Responsible Heathrow 2020 targets"がある。この目標いは、2020年までに空港内でのエネルギー消費による二酸化炭素排出量を34%削減する、廃棄物70%をリサイクルする、航空機から排出される窒素酸化物排出を地上ベースで少なくとも5%削減し空気汚染を緩和する、すべての航空機によるノイズを国際基準以下に抑制する、などを掲げていた。
ヒースロー空港は、二酸化炭素基準、水資源基準、廃棄物基準の自社に関する3つの認証を獲得するにあたり、照明70,000個をLED電球に切り替え空港全体の排出量を2年間で5%削減し、トイレや排水管が老朽化していたターミナル1を2015年6月に閉鎖し乗客1人あたり3.9%の水使用量を削減、さらに食料廃棄物1,800トンを堆肥化し乗客1人あたり3.1%の廃棄物量を削減した。また、ヒースローの主要サプライヤ―20社が出す二酸化炭素排出量は、サプライチェーン全体の76%を占めており、サプライチェーン基準を獲得するため主要サプライヤーとともにフォーラムを形成。具合的的なアクションプランを展開してきた。ヒースローは2015年12月の気候変動枠組み条約パリ会議(COP21)で策定されたパリ協定に世界で最初に署名した空港であり、世界で最もサステナブルなハブ空港になると公約している。今年3月にはさらに空港内の二酸化炭素排出量を削減するため、貨物機やトラックを共同で使用するポータルサイトの設置を発表、先駆的な事例として注目を集めている。カーボントラストの認証は2年更新のため、ヒースロー空港は今後もさらに改善の努力を続けていくと表明している。
カーボントラストは、日本でも長崎県からの委託を受け、洋上風力発電を目的とするNPO法人長崎海洋産業クラスタ―形成推進協議会や風力エネルギー研究所等のコンソーシアムによるプロジェクトを推進するなど、日本企業からの関心も高まっている。ヒースロー空港の認証取得やアクション事例は、日本の空港にとっても大きな参考事例となる。
【参照ページ】Heathrow's Environmental Record Earns Four Carbon Trust Standards
【企業サイト】Carbon Trust
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