座礁資産とは、市場環境や社会環境が激変することにより、価値が大きく毀損する資産のことを言います。特に最近注目されているのが石炭、石油、天然ガスなど化石燃料資産です。現在、化石燃料は重要なエネルギー源と考えられており価値のある資産ですが、気候変動対応により二酸化炭素排出量削減をしなければならない状況となるとエネルギー源として活用できなくなり、資産価値が大きく下がると考えられています。資産価値が減少すると、その資産を保有する企業は、財務会計上、その資産価値の減損処理しなければならなくなり、企業の損益計算書と貸借対照表を大きく痛める結果となります。このように価値が大きく毀損する資産のことを「座礁資産」、英語で「Stranded Assets」と呼ばれており、世界各国で会計士や会計学の専門家からも大きな注目を集めています。
座礁資産という言葉は、国際環境NGOのCarbon Tracker Initiativeが2011年に発表した報告書「Unburnable Carbon」の中で初めて提唱された概念です。この報告書は、地球の年間平均気温の上昇を抑制するためには排出できるCO2の量に限りがあり、地中に埋蔵したまま使用できない化石燃料の価値を試算しました。Carbon Tracker Initiativeは現在、座礁資産をもたらす環境変化として、(1)法規制の変化、(2)市場価格の変化、(3)距離・洪水・干魃など物理的な変化、の3つを挙げています。
座礁資産という概念は、Carbon Tracker Initiativeが提唱した後、英オックスフォード大学のSmith School of Enterprise and the Environment(スミス企業環境スクール)によってさらに普及していくこととなります。このスクールは気候変動や長期的な自然環境サステナビリティの分野におけるビジネス研究をする機関として2012年に設立され、機関投資家、企業や政府、NGOなどとともに研究を進めています。Carbon Tracker Initiativeもスミススクールの協力パートナーです。スミススクールは、座礁資産を研究するためのプログラム「Stranded Asset Programme」を2012年に立ちあげ、その後「Sustainable Finance Programme」と改称、頻繁に調査報告書を発表しています。スミススクールは現在、座礁資産をもたらす要素として、以下5つを挙げています。
- 気候変動や水資源制約など自然環境課題
- シェールガスやリン酸など新たな資源の登場
- 炭素税や大気汚染規制など新たな政府法規制
- 太陽光や風力など再生可能エネルギーのコスト低下
- 社会規範や消費者性向
- 訴訟や現行法解釈の変化
座礁資産という概念は現在様々な分野適用できるもの考えられており、エネルギー分野以外でも、農業分野、武器産業分野などにも座礁資産化する資産があると言われ始めています。
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