英国政府は3月11日、同国をソーシャルインベストメントのグローバルハブ(拠点)とする計画に向けた戦略概要を公表した。国内戦略と海外戦略の二部構成で、国内戦略としては、投資家や地域社会がよりソーシャルインベストメントという機能を活用できるよう規制などを総点検していく。海外戦略としては年金基金等を引き寄せる中核地の位置づけを目指す。
ソーシャルインベストメントとは、財務的リターンだけでなく、社会的インパクトをもたらすことをミッションとし運営されている法人に対して資金を提供する活動のことを言う。英国では現在、社会的企業が中小企業の約20%を占めるにまで拡大。社会的企業は、社会課題に対してのサービスを提供したり、社会課題に立ち向かう新たな解決策を生み出したり、さらに経済活動そのものを活性化させることから、政府もこの分野の育成を重要な国家戦略のひとつとして位置づけている。そのため、社会的企業を成長させるためのソーシャルインベストメントに大きな関心を示している。
ソーシャルインベストメントをより活発にするための国内戦略として、今回の戦略概要の中では、過去5年間の社会的投資の総括と今後5年間の戦略が示された。過去5年間の成果としては、
- 政府の活動経由で社会的投資を受けた法人:485団体
- 社会的企業の法人数:741,000団体(58,000増)
- 社会的企業での雇用者数:230万人
- Big Society Capital及び共同出資者からの資金提供金額:6億ポンド
- ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の発行件数:32件
(注)Big Society Capitalとは、政府が2012年に設立した機関。NPO中間支援団体に資金提供する基金の役割を果たしている。
そして次の5年間で注力するものとして、今回3点を掲げた。
- 公共セクターがSIB等のソーシャルインベストメントを活用できるよう促進
- 個人投資家や機関投資家がよりソーシャルインベストメントしやすくなる環境を整備
- 機関改善などを通じソーシャルインベストメントの市場インフラを強化
政府は、「マーケット・スチューワード」として、社会的投資に関連する法規制およびそれ以外の障壁を排除する方向で検討している。また英国内の大学と連携してリサーチセンターを設立し社会的投資を促進することや、今後12カ月間で中央政府の少なくとも3分の2の省庁で社会的投資を活用した新たなモデルを構築することも計画している。
一方、国際戦略は「社会的投資:グローバルハブとしての英国」というタイトルで、内閣府、ブリティッシュカウンシル、英国貿易投資総省、外務・英連邦省、英国国際開発省が共同で作成した。政府は自国をソーシャルインベストメントの世界的中心とするために次の4点を掲げた。
- ソーシャルインベストメントを英国に呼び込む
- 社会的企業を英国に呼び込む
- 英国の社会的企業のサービスを海外輸出する
- 他国の市場で形成されたイノベーションやナレッジを英国に持ち込む
政府はとりわけ、国際戦略のための重要拠点として米国、カナダ、メキシコ、中国、韓国、インド、バングラデシュ、オーストラリア、ニュージーランド、フランスを挙げた。グローバル・ハブへの歩みを進める中、金融業界の規制機関である金融行為監督機構(FCA)も社会的投資分野への規制緩和を進めていく。また、英国の強みとして、税金の控除をはじめ、社会的投資を支持する法律・税務・経理等のエキスパートや金融仲介機関等、環境が整備されていることも挙げた。
【参照プレスリリース】Government publishes new plans to make the UK a global social investment hub
【報告書サイト】Social investment: a force for social change 2016 strategy
【報告書サイト】Social investment: UK as a global hub - international strategy 2016
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