ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス (BNEF)が2月25日に公表した調査結果では、電気自動車(EV)革命は各国政府や石油会社の予測以上に劇的なスピードで進行する可能性示されている。今後予測されるバッテリー価格の大幅な値下げに加え、2020年代には大部分の国でEVがガソリン車やディーゼル車よりも経済性が高くなるためだという。
同調査によると、2040年までにEV販売は4,100万台に達すると予測され、新車の小型乗用車販売で35%のシェアを占めるとされている。これは前年比で約60%増となる46.2万台を売り上げたと見られる2015年の数字の約90倍となる。
2040年までのこの劇的な変化は、自動車市場を超えた示唆を与えるものだ。今回の調査から、EVの増加によりその時点までに道路を走る車の4分の1がEVに該当することになり、1日あたり1,300万バレルの原油が削減される一方で、1,900 TWh(テラワット時)の電気が消費されると見積られている。
BNEFの高度先端交通アナリストを務めるColin McKerracher氏は、「今回の予測の核心部分はEVのバッテリー価格に関する調査だ。2010年以来、リチウムイオン・バッテリーの価格は既に65%下落し、昨年は350米ドルkWh(キロワット時)に至っている。我々の推測では2030年までには120米ドルkWhを大きく下回り、その後も新たな化学製品の登場によりさらに値下がりすると見ている」と語っている。
また、BNEFのシニアアナリストで今回の調査報告書の共著者でもあるSalim Morsy氏は「我々の中心的な見通しとしては原油価格が50米ドルに回復することがベースとなっており、2040年までには1バレルあたり70米ドルまたはそれ以上に戻ると見ている。興味深いことに、もし原油価格が20米ドルまで下落し、そこで留まったとしても、EVの大規模導入が2030年代初期にずれ込むだけ(の限定的な影響しかない)だろう」とコメントしている。
現在のEV市場は中国、オランダ、ノルウェーなど新たなテクノロジーの活用やCO2排出の削減に積極的なアーリーアダプターと、政府による優遇策に大きく依存している。EVはこれまでに世界中で130万台売れ、2015年には大きな成長を遂げたものの、絶対数としては未だ昨年の小型乗用車販売数の1%以下に過ぎない。
EV車にはバッテリーだけを電源にしてモーターを動かすBEV車と、リチャージできるバッテリーおよびバックアップとして従来のエンジンを搭載するプラグインハイブリッド車、PHEV車との2種類ある。過去6年間のBEV車のベストセラー車は日産リーフで、PHEV車のベストセラーはシボレー・ボルトだ。
今回の調査に基づく試算によると、2020年代半ばまでには、所有にかかる全体的なコストは補助金なしの場合でもBEVのほうが内燃エンジン車よりも安くなると見積もられている。もし内燃エンジン車の平均的な燃費(走行距離)が毎年ガロンあたり3.5%ずつ上昇したとしても結果は変わらないとのことだ。60kWh のバッテリーを搭載したBEVは一度充電してから次の充電までに200マイル(約320キロメートル)走行できると推測されている。BNEFは、それらの長距離走行用で中価格帯の初代BEVが今後18カ月はシェビー・ボルトとテスラ・モデル3の販売により市場を活気づけるだろうとしている。
【参照リリース】Electric Vehicles to be 35% of Global Newcar Sales by 2040
【団体サイト】Bloomberg New Energy Finance
【参照サイト】Here’s How Electric Cars Will Cause the Next Oil Crisis:A shift is under way that will lead to widespread adoption of EVs in the next decade.
(※写真提供:bright / Shutterstock.com)
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