2016年2月22日から25日までベルリンで開催されたプライベート・エクイティ業界の国際大会「SuperReturn International 2016」。日本ではまだプライベート・エクイティという言葉はそこまでは浸透していないかもしれませんが、資本市場の世界ではプライベート・エクイティは新たなアセットクラス(投資カテゴリー)として注目を集めてきています。プライベート・エクイティを日本のビジネスパーソンに馴染み深い言葉で表すと、ベンチャー・キャピタルであり、買収ファンドであり、再生ファンドであり、インフラファンドであり、このような株式公開企業ではない未公開企業を対象にした投資のことを総じてプライベート・エクイティと呼ばれています。英語ではPEと略されるのが一般的です。
ESG投資が大きく取り上げられた今年のフォーラム
このプライベート・エクイティの世界にもESG投資という言葉登場し始めたのがここ数年のことです。ESG投資と言えば、一般的には株式市場への投資を念頭に議論されることが多く、最近では債券市場や不動産市場におけるESG投資のあり方も模索されてきていますが、ついにこの波がPEにも及び始めています。今回開催された「SuperReturn International 2016」では、22日に丸一日をかけて行う4つのサミットのうち、「ESGをPEに統合する」というテーマが1つに選ばれました。登壇者には、世界三大PEファンドの一角を占めるKKR社、スウェーデンの公的年金基金からAP2、AP3、アル・ゴア元米国副大統領がインパクト投資のために創設したジェネレーション・インベストメント・マネジメント社など欧米の錚々たるメンバーが揃いました。さらには、23日に開かれた全体集会での基調講演にはアル・ゴア氏と同じくジェネレーション・インベストメント・マネジメント創業者のデイビッド・ブラッド氏が務め、今年のPEフォーラムではESG色が色濃く打ち出されました。この背景には何があるのか、そしてどのような議論があったのでしょうか。
参加者の顔ぶれ:GP、LP、サービス・プロバイダー
本題に入る前にこのフォーラムに集まった参加者のことに触れておきます。今年のイベントには約2,000人が参加。会場を見回した所、参加者の90%以上は欧米からの参加者で、中東・アフリカ地域やアジアからの参加者はほぼいませんでした。参加者の属性は主に、GP、LP、サービスプロバイダーの3種類に分かれます。GP(General partners)とは、投資ファンドを組成し投資先企業のマネジメントを行う企業のことです。よりイメージしやすい説明をすると、ベンチャー・キャピタルや買収ファンドと言われるファンド運営会社そのもののことです。
PEからの投資リターンを上げるためには、株式公開市場で多いように投資をして待っていてもリターンは上がりません。PEは投資をした後に投資先企業の企業価値を上げ最終的に買収金額よりも高値で売却(エグジット)をすることでリターンを上げるものです。GPは投資をした後に企業価値を上げるための企業経営やオペレーションにまで深く関与し経営陣と二人三脚となって企業を成長していくという重要な役割を担っています。最近報道されているケースだと、シャープ社の買収に名乗りをあげた政府ファンドの産業革新機構はGPに該当します。
LP(Limited partners)とはPEへの資金の出し手です。PEでは企業の株式をバイアウトするためかなり大きな資金力を必要とします。GPの自己資金だけでの資金では足りないことも多く、またGPとしてもリスク分散のために一つの企業に賭けるのではなく自己資金を分散投資したいという思惑もあります。そこで登場するのがLPです。LPとは所謂機関投資家で、保険会社、公的年金、企業年金などが主たる担い手です。中には富裕層や資産家ファミリーなどの資金もPEに流れていることも多く、資産家ファミリーの資産管理団体のことを業界では英語でファミリー・オフィスとも呼ばれています。LPは直接的には投資先企業との接点を持たず、GPを通じて間接的に投資先企業に関与することになります。LPがPEに関与する理由には、より高いリターン、アセットクラスの分散などが挙げられます。
GPにとってのESGとは価値創造と価値保全
「ESGをPEに統合する」サミットで数多くあった発言は、…
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