うわべだけ環境保護に熱心にみせることを「グリーンウォッシング」と言います。「グリーン(=環境に配慮した)」と「ホワイトウォッシング(=ごまかす、うわべを取り繕う)」を合わせた造語で、主に企業の広告や企業活動などに対して使われます。
歴史
1970年代から、人々の環境意識の高まりを受け「環境に優しい」イメージを訴求することは、企業のイメージアップに高い効果があらわるようになりました。すると、実際はそこまで環境に優しい活動をしていないのに「環境に優しい」と主張する企業が出てきました。具体的には、
- CSR報告書で関係ないのに自然の写真を使う
- アースデイの前後に環境に優しいイメージ広告を出す
- 必要以上に自分たちの環境技術の取り組みを紹介することで、環境に優しくない自社の活動に気付かせず、エコなイメージを訴求する
などのやり方が見られるようになりました。
こうしたやり方を揶揄するために、1980年代から欧米の環境活動家が「グリーンウォッシング」という言葉を使い始めました。1992年のリオサミット直前には、グリーンピースが「GREENWASH」という本を出版し、この言葉を世界中に広めました。
なぜ問題なのか
マーケティングをおこなっている企業EnviroMedia Social Marketingが、the University of Oregon School of Journalism and Communicationと共に2007年に立ち上げた、企業広告のグリーンウォッシュ度を測るサイトGreenwashing Indexによると、グリーンウォッシングの最大の問題点は「環境に良い」と訴求している商品が、実はそうではない点です。「環境に良い」と信じて商品を買っても、結果的に環境を傷つけてしまう…。こうしたことが度々起こると「環境に良い」とうたう商品を消費者が信じられなくなってしまい、本当にエコな商品も売れなくなる可能性があります。企業にとっても、グリーンウォッシングだと指摘されることは、企業イメージを損ね、最終的には売上が下がります。
グリーンウォッシングの例
- 2009年にヨーロッパのマクドナルドが、ロゴの色を黄色と赤から黄色と緑に変更した。
- フォード・モーターはTaurus SHO 2010モデルにエコブーストと名づけたが、2010 Taurusの燃費(17/25mpg)は1990年モデルの燃費(16/24mpg)と変わらなかった。
- キンバリー・クラーク社は「環境にやさしい、ピュアでナチュラルなおむつ」として製品を売り出したが、実際は、外側には有機栽培の綿を使いアロエとビタミンEを加えていたものの、内側には同じ石油化学製品のゲルがあった。
- The Santa Fe Natural Tobacco Company(SFNTC)がAmerican Spiritを「無添加のタバコ」「オーガニックのタバコ」「生産の時に風力発電の電力を使用している」などの訴求で環境に優しいイメージを打ち出している。しかし、タバコは本来、体に害があるもので、それを打ち消すためにエコやオーガニックといった訴求をしているか、と批判されている。
グリーンウォッシングの見分け方
企業や団体の持続可能な活動の広告等のコンサルティングをおこなう、英国に本社を置くFuterra社が中心となって2009年に発行した”Understanding and Preventing Greenwash: A Business Guide“には、グリーンウォッシングの定義、見つけ方、企業がそう言われない方法等が載っています。ガイドの7ページには、「グリーンウォッシングの10のサイン」が載っています。
- あいまいな言葉を使っている(例:エコフレンドリー)
- 開発、販売した企業が裏では悪いことをしている(例:電気効率の良い電球を作っているが、工場からは汚染物質が川に垂れ流しされている。)
- 何かを連想させる写真を使っている(例:煙突から花が咲いている合成写真を使い、環境に優しいイメージを訴求)
- 不適切な主張(例:環境に悪い企業活動をしているのに、小規模な環境活動を大々的に主張
- 同業者の中では一番だ、という主張(例:同業者や同じモデルとの比較で、他は全く環境に優しくない中、少しでも優しいことを大きく訴求)
- 信頼できない(例:タバコはそもそも危険なもので、エコだからといって安全にはならないのに「エコフレンドリーなタバコ」と訴え、安心感を打ち出す。)
- 専門用語の羅列(例:広告等に科学者、専門家にしか分からない情報を並べる。)
- 第三者機関を作りだす(例:第三者機関の認証に見せながら、実は自社で作り出した認証ラベルを使っている。)
- 証拠がない
- にせ、でっちあげの内容
なお、同レポートのP28~30には、企業がグリーンウォッシュにならないためのチェックリストが載っています。気になる方はお読みください。
グリーンウォッシング対策
「環境に優しい」というイメージを売り上げにつなげようと、エコをうたった商品は、世の中にあふれています。消費者は多くの製品から、グリーンウォッシングではないものを選ぶ目を養う必要があります。また、企業は「グリーンウォッシングだ」と批判されないコミュニケーション方法を学び、実践していかなければなりません。
その方法の1つが、多くの事例を見ること。例えば、企業広告のグリーンウォッシュ度を測るウェブサイトGreenwashing Indexは、企業の広告等に対して、グリーンウォッシュ度を独自に測り、公開しています。ウェブサイトを見ると、企業はどういった方法が良くないのかが分かり、消費者は何がグリーンウォッシングになるか、見極める目を養うことができます。日々の生活で目にする広告、スーパーの棚に並ぶうたい文句、企業のCSR報告書を見るときに先述した「グリーンウォッシングの10のサイン」に当てはまる内容はないか、注意してみましょう。今日からぜひ、実践してみてください。
参考文献、参考URL
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