熱帯雨林の保護政策が本来の目的とは逆の結果を招き、森林破壊の拡大に繋がっているという2本の論文が米国ボイシ州立大学の研究者Jodi S Brandt氏らにより発表され、注目を集めている。
調査対象となったのは、2000年に持続可能な森林経営政策に基づく森林法を制定したコンゴ盆地だ。最初の研究は2000年~2010年間の伐採権保有業者の国籍および森林法に準拠しているか否かによる森林破壊の比較で、2014年4月にEnvironmental Research Lettersに掲載されている。
2番目の研究はリースによる伐採業者が森林法に準拠しているか否かと森林破壊との関係を調べたもので、2016年3月にLand Use Policy誌上で発表される予定だが概要はウェブサイト上で閲覧可能となっている。
結果として、最初の研究ではコンゴの森林法で求められている森林経営計画(Forest Management Plans)への対処やFSC認証取得の点で有利なヨーロッパの企業(40%)はアジア(33%)や地元コンゴの企業(7%)より多くの伐採権を所有しており、木材調達量が多い一方で、既存の道路、現地人の居住地、農業地域に近い周縁部(森林破壊全体の93%を占める)・中心部共に森林破壊の度合いが激しく、森林地帯の分断も起きていることが分かった。
さらに2番目の研究でも、森林法に準拠しているリース伐採企業のほうが、そうでない企業と比較して2倍の森林破壊を引き起こしており、2005年から2010年の5年間で67平方キロメートルに相当する森林が消失していることが明らかになった。
Brandt氏らは、このように森林破壊が拡大している要因として「合法的な木材製造のための合法的な道路建設の増加」「伐採可能な地域や時期の限定による、奥地を含むより広範な地域での作業と関係者の生活圏の拡大」「木材の国際的な需要拡大に伴う外国資本の投下の拡大」などを指摘している。特にヨーロッパでは高質な特定の木材への需要がアジアや地元より大きいため、より多くの道路建設が必要になっているという。
熱帯雨林の保護は地元住民の経済活動や環境保全、気候変動緩和、生物多様性保護、水源涵養など様々な側面から最重要サステナビリティ課題となっており、世界中で政府や環境NGO、企業らによる持続可能な森林政策を進展させるための活動が展開されている。現在、全世界で4億ヘクタール以上の熱帯雨林は木材製造用に管理されており、熱帯雨林全体の半部以上が持続可能な森林経営政策(SFM)の下にある。
コンゴ盆地はアマゾンに次ぐ世界で2番目に大きい熱帯雨林で、コンゴの森林面積は1億5,500万ヘクタール、世界の森林の約4%を占めている。コンゴでは森林は全て国有だが、森林法の下で多様な事業主体が資源の利用を認められている。ニシローランド・ゴリラ、森林ゾウ(マルミミゾウ)、ボンゴ等の貴重な絶滅危惧種の動物が生息しており、貴重な環境の保全と林業・木材製造を中心とした経済活動の促進という課題に取り組んでいる。この地域での森林法の適用範囲での活動は、地球全体の森林保護という意味でも極めて重要な意味を持つ。
しかし今回の研究は、法律やガイドラインの制定・施行が本来の意図とはかけ離れた結果を生じる可能性があることを示唆している。想定外の森林破壊や森林の分断が起きているのだ。研究者たちは結果について「限定された地域・期間での調査であり、より多くの地域での継続的な調査・研究が必要である」と指摘しており、より効果的な政策を進めるためには、広範かつ体系的な分析と実情に即した対応が求められる。
【参考サイト】Foreign capital, forest change and regulatory compliance in Congo Basin forests Environmental Research Letters Volume 9, Number 4 Published 9 April 2014
【参考サイト】Deforestation and timber production in Congo after implementation of sustainable forest management policy Land Use Policy Volume 52, March 2016, Pages 15–22
【参考サイト】持続可能な森林経営及びREDDプラス促進のための国家森林モニタリングシステム強化プロジェクト
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