地球の気温上昇を2℃未満に抑える上で科学的に必要とされるCO2排出量に基づく削減目標の設定を推進している国際イニシアチブ、Science Based Targetsイニシアチブ(SBT)は12月8日、参画企業が当初の目標だった100社を上回り、114社に拡大したと公表した。
Science Based Targetsによると、参画企業らによるCO2排出量の合計は少なくとも年間4億7,600万tにのぼり、南アフリカや石炭火力発電所125カ所分の年間排出量に相当するという。この数値は、114社による意欲的な排出量削減のコミットメントが、いかに気候変動の緩和に多大な貢献ができるかを示している。また、114社の2014年度の総利益は少なくとも9,320億米ドルとなっており、全体の約4分の1は米国、英国、フランス、カナダに本拠地を置いているとのことだ。
Science Based Targetsは、企業の気候変動対策に関する情報開示を促進しているCDP、WRI(World Resources Institute、世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)、国連グローバルコンパクトの協働による取り組みだ。科学的根拠に基づくCO2排出基準を決めており、企業の削減目標は厳しい基準を満たした場合にのみ承認される。
既に承認を得ている企業は、コカ・コーラ・エンタープライズ、デル、エネル、ゼネラルミルズ、ケロッグ、NRGエナジー、P&G、ソニー、タリス、ファイザーの10社で、これらの企業の目標値を合算すると、10社の事業運営から排出されるC02の削減量は7億9,900万トンにおよぶ。
各社の具体的な目標設定としては、ケロッグは2020年までに排出原単位(製品1トンを製造する際のCO2排出量)を2015年比で15%削減、また2030年までにバリューチェーンによる絶対排出量を2015年比で20%削減、さらに長期目標として2050年までに自社の絶対排出量を2015年比で65%削減し、同期間のバリューチェーンによる絶対排出量を50%削減するという目標を設定している。
また、NRG エナジーは2030年までに絶対排出量を2014年比で50%削減、長期目標としては2050年までに90%削減を目標に掲げているほか、IT大手のデルは自社施設および物流において2020年までに2011年比で50%の排出削減、そして同年までに製品ポートフォリオのエネルギー排出原単位の80%削減を目標としている。
今や、グローバル企業にはただ自社の事業やバリューチェーンから排出されるCO2排出量を削減するだけではなく、科学的な根拠に基づいて必要となる削減量を達成することが求められている。それはすなわち非常に意欲的な削減目標を掲げることを意味するが、一方では、科学的根拠に基づく目標設定を行うことで「なぜ」その目標を達成する必要があるのかという理由が明確になるため、ステークホルダーに目標達成の意義を共有し、協力を得やすいというメリットも生まれてくる。
Science Based Targets に参画している114社のうち、現状日本企業は電通、本田技研工業、花王、コニカミノルタ、日産自動車、リコーの6社のみだが、今後さらに多くの企業が参画し、野心的な目標設定を自社の新たな事業機会へと変えていくことを期待したい。
【加盟企業一覧】Companies taking action
【参照リリース】114 Companies Commit to Set Ambitious Science-Based Emissions Reduction Targets
【団体サイト】Science Based Targets
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