ドイツの戦略コンサルティングファーム、ローランド・ベルガー社は11月5日、「燃料電池電動バス ーヨーロッパの持続可能な公共機関の可能性」と題する報告書を発表し、ヨーロッパ市場において現在主力となっているディーゼルバスに替わり、将来燃料電池バスが導入されていくという可能性を示した。報告書は法規制、技術、コスト、現段階での各国でのフィジビリティー結果を包括的に分析、関係者に対する提言をまとめた。
EUでは、2009年に「クリーンでエネルギー効率のよい一般道路車両の推進に関する指令 2009/33/EC」が出されて以降、公共交通事業者が車両を購入する際に、車両価格に加え、エネルギー消費量、CO2排出量、NOx排出量、PM排出量などを考慮するよう義務付けている。その後、燃料電池バスの導入が実験的に進んでおり、目下のところヨーロッパ8ヶ国、17都市で合計84台が運行もしくは運行予定の状況にあるという。報告書では、バス事業者は燃料電池バスの導入にあたり排出量ゼロという利点と安定運行の両天秤の中で葛藤しているとしながらも、現在の運行実験ですでに800万kmの走行実績があり、燃料電池バスの商業運行はすでに実用レベルにまで来ていると結論づけた。
コスト面においては、1990年代と比べ製造コストが75%も削減されたとしながらも、普及に向けては一層のコスト削減努力が必要と強調。その中で、各界の関係者が燃料電池バスの普及を共同して推進することで、バス本体、道路インフラストラクチャー、水素ステーション整備等でスケールメリットが働き、将来に向けた大幅なコスト削減が可能となると試算した。ヨーロッパではすでに「燃料電池バス連合」というプロジェクトが始動しており、バス製造メーカー、部品メーカー、インフラ提供事業者が一体となって燃料電池バスのフィジビリティーを進めている。プロジェクトではすでにドイツ、イギリス、フランス、オランダ、ベルギー、イタリア、スイス、ポルトガル、ノルウェー、ラトビアの数多くの市で進められており、報告書では2020年までに300〜400台の普及を目指す見通しだという。
国際的にはFCH JU(燃料電池・水素合同事業)という取組が始まっている。ヨーロッパの地方自治体の他、日本からも東京国際空港、中部国際空港、愛知県豊田市がプロジェクトに参加しており、空港バスや豊田市内を走る名鉄バスで燃料電池バスを走らせている。燃料電池自動車の世界では、トヨタ自動車を業界をリードしているが、バス展開の推進は日本よりもヨーロッパで進んでいると言える。今後10年、燃料電池はR&Dの領域を抜けだして、産業競争の次元へと突入しそうだ。
【報告書URL】Fuel Cell Electric Buses –Potential for Sustainable Public Transport in Europe
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