国連の専門機関、世界気象機関(以下、WMO)は11月25日、2015年は観測史上最も暑い年となる可能性が高く、産業革命以前の時代の平均気温から約1℃上昇し、象徴的かつ重要な節目を迎えていると発表した。
WMOは、この記録的な高温の要因について、南米ペルー沖の太平洋赤道地域で発生し、海面温度の局所的な上昇や気温、雨量の極度の変化などの異常気象につながるエルニーニョ現象の活発化と、人間の活動による地球温暖化との組み合わせによって引き起こされているという見解を示した。
2011年から2015年までの5年間は観測史上最も暑い5年間となり、気候変動による多くの異常気象現象が発生している。2015年1月から10月までのデータに基づく暫定的な推計によると、この期間の地表付近の平均気温は14.73℃で、1961年から1990年までの平均気温である14℃より約0.73℃高く、産業革命以前である1880年から1899年までの平均より約1℃高い。
WMOの事務局長を務める Michel Jarraud氏は「温室効果ガスのレベルがこれまでの最高値となり、今年の春季3カ月の北半球での平均CO2濃度が初めて400ppmの壁を超えた。海洋の表面温度も観測開始以来最も高くなっており、1℃の閾値(境界点)を超えたことが確実と思われる。これは地球にとって悪いニュースだ」と述べた。その一方で、気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出は制御可能だとし、「我々には知識とツールがある」と付言した。
強力に発達したエルニーニョ現象は今後も続く見通しだ。しかし2015年に発生した気候変動による異常気象現象は気温上昇やエルニーニョだけではなく、他の様々な災害をもたらしている。インドとパキスタンでは5月と6月に熱波の来襲により気温が40~45℃以上にまで上昇、ヨーロッパ、北アメリカ、中東等、多くの地域でも晩春から初秋まで記録的な高温となった。
マラウイ、ジンバブエ、モザンビークでは1月に豪雨による大規模な洪水が発生し、チリでは3月に豪雨による洪水と土砂崩れに見舞われた。この地域以外でも、米国南部、メキシコ、ボリビア、ブラジル南部、欧州南東部等、多くの地域で大雨が観測されている。その一方で、降水量が極端に少なかったアメリカ中央部、カリブ海地域、ブラジル等では干ばつによる被害を受け、米国西部やアラスカでは大規模な山火事が多発した。
今回の発表は11月30日から12月11日まで開催されている国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を目前にして行われたものだ。WMOのデータは、気候変動は現在進行形で深刻化しているということを改めて我々に再認識させてくれる。
【参照リリース】WMO: 2015 likely to be Warmest on Record, 2011-2015 Warmest Five Year Period
【団体サイト】WMO
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