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時価総額上位100社の96%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」

 今年の10月、マレーシアの首都クアラルンプールにおいてCSR・サステナビリティに関するグローバルカンファレンスが2つ開催されました。一つは10月7日~8日にかけて行われた「CSR Asia Summit 2015」、もう一つは10月12日~13日にかけて行われた「Sustainable Brands 2015 Kuala Lumpur」です。

 最近ではアジアで大規模なCSRカンファレンスが開催されるケースが増えてきており、世界全体のビジネスやCSR・サステナビリティの枢軸が徐々に欧米中心からアジアへとシフトしてきていることを感じさせます。

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」 1

 アジアは21世紀のグローバル経済を牽引する新興市場として世界中から熱い視線を浴びる一方で、環境破壊や気候問題、貧困や人権など様々なサステナビリティ課題に直面しています。そのような中、アジアのCSR・サステナビリティを牽引するグローバルブランドや現地企業のリーダーらは一体何を考え、どんなことを話し合っているのでしょうか。

 今回は、自ら現地に出向いて上記2つのカンファレンスに参加された株式会社レスポンスアビリティの代表を務める足立直樹氏に、アジアの最新のCSR・サステナビリティ事情についてお話をお伺いしてきました。

CSR Asia Summit 2015について

Q:今年のCSRアジアはいかがでしたでしょうか。

 CSRアジアの年次サミットは今年で9回目となり、クアラルンプールでの開催は今回が2回目となります。今回は開催地のマレーシアをはじめ、シンガポールやタイ、インドネシアなどアジア各国から400名以上の参加者が集まりました。日本からの参加者は私を含めて5名程度と少なかったですが、海外の情報収集にも積極的な大手製薬メーカーや金融機関のCSR担当者の方が参加していました。

 今年はマレーシアが開催地ということで、トピックとしては森林やパーム油に関する話などが多かったです。マレーシアのパーム油プランテーション大手、サイアムダービーは副社長が参加するほどで、パーム油の生産に伴う森林破壊というテーマが最も話題となっていました。また、グローバルブランドとしてはコカ・コーラ、ネスレ、VISAなどが参加していました。

Q:今年は9月にSDGsが採択されましたが、当日はSDGsについても触れたのでしょうか?

 SDGsについてのセッションもありましたし、企業はSDGsについてもかなり意識をしているなと感じました。CSRアジアはもともとオーストラリアの創業者らが設立した団体ということもあり、アジアだけではなく西洋的な考え方も取り入れているので、SDGsのようなグローバルのトピックについてもしっかりとフォローしていると感じます。

Q:当日発表された「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングでは今年から初めて日本企業が対象になりましたね。

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」 2 「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングは今回が二回目で、今年から日本企業も対象に入ったのですが、トップ100社のうち32社が日本企業だったというのは当日会場でも話題になっていました。日本はこの分野でも非常に頑張っているなという印象を与えられたのではないかと思います。
(参考記事:【アジア】「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングが公表

 一方で、会場でも何人かの参加者が話をしていましたが、今回ランクインした日本企業32社のうち、トップだったNECの順位は全体で14位でした。トップ20位にランクインできた日本企業はNECのみという結果となり、日本は全体としては頑張っているけれども突出した企業はないという印象も受けました。

Q:ランキングを見て気になるところはありましたか?

 1位のウィプロをはじめ、トップ10位の中にインドのIT企業が多くランクインしていました。最近インドは全般的にCSRを頑張っている印象があります。2013年にCSRが法律で義務化されたことも影響しているのかもしれません。

 特に今回上位を占めた企業は老舗企業というより比較的新興系のIT企業が多いのですが、新しい企業が頑張っているというのはとてもいいことだと思います。一方、日本では新興企業がCSRを頑張っているという話はあまり聞かないので、少し差を感じました。

Q:サミットに参加していた企業の中で特に目立っていた企業などはありましたか?

 今回はセッション数自体が少な目でしたが、全体としては地場企業よりもグローバルブランドのほうが活躍している印象を受けました。特にイケアやVISAなどがアジアで積極的な取り組みを行っているのは印象的でした。また、パーム油の取り組みなどで目立っている地場企業としてはサイアムダービーやムシム・マスなどですね。

Q:どんなセッションが印象に残りましたか?

 印象に残ったセッションは、森林に関するワークショップ形式のセッションです。「Conservation vs Development(保全か、開発か)」というテーマのセッションだったのですが、参加者は自分自身がプランテーションを経営する企業の役員になったと仮定して、仮想の国の農地開発に関する判断を求められるのです。現地では農業生産の需要があるものの、開発をするためには自然を破壊しなければならず、また先住民の生活に影響を及ぼす可能性もあります。その状況下において、自分が役員だとしたらどのような判断を下すかについて参加者同士で議論するというワークショップです。

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」 3 セッションを通じて感じたのは、事業を開発する側の立場になると、環境を破壊する側の経営者の気持ちも分かるということです。自社が保全を重視して開発から撤退するとなれば、自社よりもっとひどい別の会社が開発に参入してくる可能性もあります。そういう意味で、保全を重視して撤退するのがベストな回答とは一概に言えません。

 また、意外だったのは、環境保護に取り組むNGOの人々のほうが「どうしようもない会社が入ってくるぐらいであれば、まだ自社でやったほうがまし」という考え方をするという点でした。NGOの中でも実際に問題に直面している人々はより現実的な思考をするということが分かりました。
 
 我々は概してNGOらの主張の結果の部分だけを見てしまいがちですが、その裏には色々な苦渋の決断もあるということを理解する必要があります。また、必ずしもNGOのほうが理想論的に考えていて、企業がそうではないというわけでもありません。実際に相手の立場になって考えてみるという状況を創り出すということはとても有効だと感じました。

Q:とても有意義な気付きのあるセッションですね。他に気になるテーマはありましたか?

 「From disaster response to resilience(災害対応からレジリエンスへ)」というセッションがありました。一時期、日本でも震災を機に災害復興の話題が盛り上がったことがありましたが、今や世界では気候変動による巨大台風や大雨洪水などの気候災害が、震災のような例外的イベントではなく毎年一定の確率でどこかに被害をもたらす定常的な災害として認識されるようになってきています。

 そのため、災害レジリエンスの向上には一時的なものではなくより組織的な対応が求められるのですが、ここで出てくるのが貧困の問題です。なぜなら、災害で一番被害を受けるのは貧困層だからです。富裕層はそもそも安全なところに住んでいますし、お金があるのでいざとなれば対応もできる。しかし、貧困層は海岸沿いなど被害を受けやすい地域に密集しており、建物も脆弱なので被害を受けるとより立ち直りが遅れてしまいます。まさにこうした部分に貧富の差が表れてしまうのです。災害レジリエンスは単なる災害対応の問題だけではなく貧困問題とも密接に結びついており、その部分をどう支援していくか、という点もポイントになると感じました。

Q:貧困問題は貧困そのものだけではなく他の様々な社会課題とも結びついているのですね。問題解決を考える上で非常に重要な視点ですね。話は少し変わりますが、イベント期間中はヘイズ(煙害)もひどかったと聞きましたが。

 イベントが開催された10月7日、8日はちょうどヘイズがひどく、クアラルンプールの街全体が霞んでいました。原因は主にインドネシアで起きている野焼きによる森林火災なのですが、今年はエルニーニョの影響などもあり特に乾燥が激しく、火災が鎮火せずに8月頃からヘイズがひどくなっていたようです。

 ショックだったのは、ヘイズに関する状況が今と昔でそれほど変わっていなかったことです。私が最初にマレーシアに行ったのは20年前だったのですが、当時からヘイズは問題視されていました。しかしその後に野焼きは禁止され、RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)のような団体もできるなどヘイズ対策はもっと進化していると思っていたのですが、未だ20年前と変わらない状況が続いていました。

Q:ヘイズについては、政府なども対策に乗り出していますよね。

 マレーシアやシンガポールの政府も困っており、憤っています。例えばシンガポール政府はヘイズの原因となる企業を排除する動きをとっており、大手小売企業らに対してサプライヤー企業がヘイズと無関係であることを宣言するよう求め、宣言できない企業は政府が運用している独自の環境認証ラベルを剥奪するという措置をとりました。

 その結果、フェアプライスやワトソンなど現地の大手小売チェーンがヘイズと関連する疑いがある企業の製品を商品棚から撤去したのです。そのことがちょうど会議の朝に報じられたこともあり、会場でもとても話題になりました。(参考記事:【シンガポール】最大手スーパーチェーンのフェアプライス、APP製品の販売を停止へ

Q:ヘイズの話題は当日のセッションの中でも出てきたのでしょうか?

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」 4 ヘイズについてはオフィシャルなセッションというより、当日の参加者同士の会話の中で話題が多く出ていたという感じです。というのも、実はヘイズに関わる話はそれほど単純ではありません。

 インドネシアで野焼きをやっている人たちがいるのですが、誰が実際にやっているのかは分からない。個人に関して言えば、必ずしも違法とまでは言えないのですが、どれが組織的なのかは判別できない。

 また、森林火災を起こしている場所は分かるのですが、それを衛星画像で把握すると、そのうちのいくつかがシンガポールやマレーシアの財閥が出資している企業の管理地域だったりするわけです。つまり、問題が起こっているのはインドネシアなのですが、実は憤りを見せているシンガポールやマレーシアも完全に脛に傷がないわけではないのです。

 また、この森林火災の問題については日本企業も無関係ではありません。先日NGOのTuk INDONESIAがインドネシアの森林火災に関わる企業に融資している企業のリストを公開したのですが、その中には日本のメガバンクや商社の名前も挙がっています。日本ではあまり話題になることはありませんが、結局ヘイズの問題一つをとっても全てはつながっているのです。

Q:なるほど、参加者同士の会話から得られる生の情報も大事ですね。

 実際にイベントに参加してみると、海外の企業や人々がどんなことを考えているのかが良く分かり、とても勉強になります。また、色々な人が集まるのでネットワーキングの場にもなります。今回は日本からは5名程度の参加でしたが、こうした場に参加しないのはそうした機会を逃しているということですから、とてももったいないなと感じます。

 また、今回はサミットの中でブースを出したりセッションに登壇したりした日本企業はありませんでしたが、現地の人々は実際に日本企業が何をやっているのかに興味を持っています。日本企業は色々な取り組みをしているのに、それを知らしめることができないのは残念ですし、ブランディング上ももったいないですね。最初は参加するだけでもよいですし、その次のステップとしてプレゼンテーションを行ったりスピーカーとして登壇したり、もっと自社のことをアピールしていくべきだと思います。

Q:海外のカンファレンスに参加するのはハードルが高いと感じる気持ちも分かります。

 なぜ日本企業からの参加者が少ないかというと、大きく理由は2つあると思います。一つは言語の壁です。しかし、言語については個々人として問題があるのなら、会社全体で考えれば、英語ができる人を参加させれば済む話だと思います。社内にそうした人材がいなければ採用することもできるわけですから、それは簡単に克服できることです。実際どこの会社だって、海外でビジネスをするときにはその国の言葉ができる人を雇いますよね。

 もう一つの理由は、会議に参加することがどのように役に立つのかが分からない、という投資対効果に対する疑問なのではないかと思います。確かに会議に一度参加しただけで何かが変わるわけではないかもしれません。しかし、実際に参加してみて初めて気づくことは非常に多くありますし、その場での人的ネットワークも自然と生まれます。こうした会議への参加は短期的な成果というよりは長期投資と考えるべきです。少なくとも確実に言えることは、行動を起こさない限りは絶対に成果は出ないということです。

Sustainable Brands Kuala Lumpurについて

Q:続いて、Sustainable Brands Kuala Lumpurについても教えて頂けますでしょうか。今年はアジアではバンコクに続き2回目の開催となりました。

 私自身は今回初めてSustainable Brandsのイベントに参加したのですが、結果的には非常に面白かったです。Sustainable Brandsはアメリカ発のイベントで、「サステナビリティを事業のブランドにどう結びつけるのか」という観点が中心となっています。実際に当日集まった参加者の属性を見てもCSR関係者は半分を切っている印象で、かなりがマーケティングやメディア関係者という構成でした。

 サステナビリティのための会議というよりは、ブランディングにサステナビリティをどう取り込んでいくかという視点が強いのですが、そうした視点からサステナビリティに新たに関心を持つ企業もあることを考えれば、大きな意義があると思います。

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」 5 また、このサステナビリティのマーケティングやブランディングといった部分は日本企業が一番弱い部分でもあるのです。

 トヨタのプリウスなどごく一部の成功例もありますが、日本企業は全体的にサステナビリティをうまくブランド化できているところがほとんどありません。そういった点はSustainable Brandsに参加しているようなグローバル企業から学ぶべき点が多いと思います。

 例えば、当日のプレナリーのプレゼンテーションでは、動画を非常に上手に活用している企業が多かったのが印象的でした。動画はものすごく効果的で、30分間の詳細なプレゼンテーションを聞くよりも、3分間の動画を見たほうが心に残ります。

Q:なるほど、CSRアジアとは異なり、ブランドやコミュニケーションといった要素にフォーカスしたイベントということですね。特に印象に残った企業はありますか?

 コカ・コーラ、ユニリーバ、イケア、BASFなどは頑張っているなと感じました。グーグルも来ていました。また、グローバルブランドだけではなくマレーシアの現地企業もプレゼンテーションをしていました。マレーシアは大手企業のほとんどがインフラ系の国営企業で、内容としては社会貢献に関する話がメインだったのですが、自社がいかに地域や国に貢献しているかということを今風な手法でプレゼンテーションしており、印象的でした。

Q:今年のSustainable Brands Kuala Lumpurのテーマ、”How to successfully innovate your brand for sustainability Now.”の冒頭に”How”とある通り、今回のイベントでは「なぜ」サステナビリティに取り組むのか、という点から一歩進んで「どう」取り組むか、という点に議論の重点が置かれていたと思います。

 まさにその通りで、Whyの議論よりもHowの議論が中心でした。これはCSRアジアも同じなのですが、今やアジアではCSRという考え方そのものについては誰も疑問を持っていません。CSRをすること自体は前提として共有されており、参加者は皆それを「どう実行するか」という点に興味を持っています。CSRアジアの場合は「実務としてどうしていくべきか」に焦点を当てていますし、Sustainable Brandsの場合はそれを「どう伝えるか」という点に焦点を当てているという感じです。

 いずれにせよアジアでは「なぜやるべきなのか」という議論は既に終わっており、Howにシフトしています。

Q:特に印象に残ったセッションはありましたか?

 当日のセッションの中で異色だったのは、マレーシアのSecurities Commission Malaysia(マレーシア証券監督当局)のGoh Ching Yin氏が参加し、プレナリーで話をしていた点です。マレーシアではBursa Malaysia(マレーシア証券取引所)が昨年の12月にFTSEと共同でESGインデックスを開始しました。また、ESG開示の義務化に向けたドラフトも7月に公開しています。(参考記事:【マレーシア】マレーシア証券取引所、サステナビリティ情報開示の義務化に向けた諮問書を公表

 他のスピーカーは基本的に消費者向けにどうブランドを伝えていくかという話をしていたのに対し、同氏はなぜESGが必要なのか、というテーマで投資家に関する話をしていました。投資家もコミュニケーションのターゲットになるということがマレーシアの企業関係者にしっかりと伝わったのではないでしょうか。

Q:イベントに参加する中で見えてきた日本企業の課題というものはありますでしょうか?

 内に籠っていてもしょうがないという点でしょう。既にグローバルでビジネスを展開するのが当たり前になっている昨今では、日本の中だけで物事を見ていると誤った判断をしてしまう可能性があります。やはり自ら外に出て現場を見に行く必要性を感じます。大変な部分があるのは分かるのですが、言語の問題など、できない部分は誰かに手伝ってもらえればよいですし、内容的に分からない部分は専門家からアドバイスをもらえればいい。とにかく外に出て、現場で見てみるということが大事なのではないでしょうか。

Q:確かに、国内だけを見ていると、意識せずに誤った判断をしてしまうこともありますね。

 日本企業の中には「自社はCSRをしっかりとやっている」という認識を持っている企業も多いと思いますが、それはあくまで国内における評価であって、国際的な評価とはずれている可能性もあります。特にCSRは余技でやるべきものではなく、会社の方向性と完全に統一してやっていく必要があります。そのあたりを国際的な感覚でゼロから考え直していかないと、これまでの取り組みも台無しになってしまいます。

Q:逆に、日本企業のほうが優れていると感じる点はありましたか?

【インタビュー】レスポンスアビリティ足立氏「今、アジアで話し合われていること」 6 アジアの企業と比較すると、実務的な管理面では日本企業のほうがしっかりできていると思います。環境面の取り組みは特にそうです。ただしそれもあくまで一定の枠の中の話であって、枠をはみ出して新しいことや革新的なことをするという意味では、世界の先進企業と比べると、まだまだ足りないと感じます。

 ではアジアの企業が現状それをできているかと言えば必ずしもそうではないのですが、今のアジアを見ていると、とてつもない革新的な取り組みがいつ出てきても不思議ではない勢いのようなものを感じます。そうした実感を持ち、新しい取り組みを生み出すという意味でも、海外の視点というものを取り入れていく必要があります。

Q:自ら外に出てみて「知る」ということがまずは何より大事ですね。本日は貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

編集後記

 今回足立氏のインタビューから感じたのは、日本企業に対する強烈な危機感です。「アジアで最も持続可能な企業100社」チャンネル・ニュース・アジア・サステナブル・ランキングでは日本企業が100社中32社ランクインするなど、日本企業はアジアの中で一定の存在感を見せました。一方で、残念ながらトップ10位には1社もランクインできませんでした。

 その大きな原因の一つとして挙げられるのが、日本企業は自社の取り組みを海外で十分に発信しきれていないという点です。CSRアジアの赤羽氏も日本企業の課題について「報告」を挙げていましたが(参考記事:【ビジネス・サービス】CSRアジア赤羽氏インタビュー「日本企業の課題は『報告』」)、足立氏も同様に、海外カンファレンスへの参加やそこでのプレゼンテーションなどのアピール、ブランディングへの活用などを課題として挙げています。

 せっかく優れた取り組みをしていても、それが消費者や投資家などに伝わなければCSRやサステナビリティ活動の投資効果は半減してしまいます。社内の中で「CSRは利益につながらない」という考えが未だに根強い企業もあると思いますが、それは活動自体に価値がないのではなく、その後の報告やコミュニケーションに原因がある可能性もあります。

 CSRアジアやSustainable Brandsといったイベントは自社の取り組みを世界のCSR専門家やCSR先進企業にアピールする絶好の機会でもあります。最初は参加者として情報収集をしにいくだけでもよいですし、スピーチやブース出展を通じて自社の取り組みを発信するのも効果的でしょう。ぜひ海外の現地イベントに参加してみてはいかがでしょうか。

参考サイト

CSR Asiaについて

アジアにおけるCSR・サステナビリティの推進を目的として2004年に設立されたアジア最大のCSR戦略コンサルティングファーム。香港を本拠地として、シンガポール、マレーシア、タイ、日本、インドネシア、英国に拠点を持ち、企業向けにCSRリサーチ、研修、アドバイザリーサービスなどを提供している。年に一度開催されるCSR Asia Summitはアジア最大のCSRカンファレンスとなっている。

Sustainable Brandsについて

米国サンフランシスコに拠点を置くSustainable Life Media社が運営するサステナビリティ専門のカンファレンス及びオンラインメディアの総称。コカ・コーラやネスレ、ユニリーバなど50社以上の会員企業を持ち、サステナビリティに関する世界有数のプロフェッショナルコミュニティへと成長している。2006年の設立以降、米国、欧州、中南米を中心に会議を開催しており、2015年3月、タイのバンコクにて初めてアジアにおける会議を開催した。

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加藤 佑

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所 主任研究員

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