気候変動対策に取り組む国際NPOのThe Climate Groupは9月25日、「Bijli – Clean Energy for All」プロジェクト(以下Bijli プロジェクト)の成果として、過去2年間でインドの4つの州に住む6万人の人々に低価格のソーラーエネルギーへのアクセスを提供したと発表した。同プロジェクトは、灯油ランプの使用により発生する屋内の大気質汚染を防ぐことで年間150万人の命を救うという革新的なプログラムの一環だ。
Bijli(ヒンドゥー語で「電気」を意味する)プロジェクトはDutch Postcode Lottery(オランダ郵便番号くじ)からの資金提供のもと、インドのマハラシュトラ、西ベンガル、ジャールカンド、ウッタルプラデシュ各州の地元起業家が支援しているプロジェクトだ。The Climate Groupは、もしこの革新的なビジネス・融資モデルが現在電気へのアクセスを持たない世界13億人の人々全員を網羅できる規模まで拡大すれば、世界の貧困層は270億米ドル分の節約につながるとしている。
オフグリッド地域における自家発電の普及を目指しているGlobal Off-grid Lighting Associationの試算によると、電気網のないオフグリッド地域では灯りをとる目的で灯油に年間300億米ドルを支出しているとのことだ。しかしソーラーマイクログリッド(太陽光による自家発電)による家庭用電灯と携帯用電灯に切り替えれば、コストは90%以上安価になるという。
また、灯油の使用は高コストであるだけではなく危険でもある。灯油ランプとストーブ使用による屋内の大気汚染質は年間430万人を死に至らしめており、ランプを原因とする死亡数だけでも150万人に上る。この数字はエイズ関連死の160万人、結核による死の150万人に匹敵する数字で、マラリアによる死者数の2倍以上に相当する。
The Climate Groupは、南アジア地域におけるソーラーマイクログリッドへの移行はオフグリッド地域に居住する5億人の人々に多大な便益をもたらすと見ている。灯油ランプや懐中電灯など全てをソーラーLEDに切り替えれば年間80億米ドルの燃料費および2,330万トンのCO2排出を削減できるだけでなく、より多くの労働・教育機会の創出、収入の増加、安全で健康的な生活につながり、貧困脱出の基盤になり得るとしている。
特に未だ30%の地域が電気網につながっていないインドでは、ソーラーマイクログリッドが多大なインパクトをもたらす可能性を秘めている。The Climate GroupがGoldman Sachs Center for Environmental Marketsと協働で作成した報告書、"The business case for off-grid in India"によると、地域分散型の再生可能エネルギーセクターの市場規模は2018年までに1.5億米ドルになり、家庭用ソーラーシステムは年間60%成長、2018年までに2億~2.5億米ドルの市場規模に成長するという。経済的な支援を受けて、現状は電力にアクセスできない720万世帯が2018年までに家庭用ソーラーシステムを購入できるようになるとのことだ。
未だ電気につながっていない貧困層の人々に対してソーラーエネルギーへのアクセスを提供することは、環境に良いだけではなく多大なコスト節約や健康的な生活の実現を通じて貧困を脱するための第一歩となる。
【参考サイト】Bijli – Clean Energy for All
【レポートダウンロード】The business case for off-grid in India
【参照リリース】Connecting world’s poor to clean energy could save US$27 billion and over 1 million lives
【団体サイト】The Climate Group
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