企業に対して気候変動対策の情報開示を求める機関投資家らによる国際イニシアチブのCDPと、低炭素経済への移行を推進する企業・投資家らによる団体のWe Mean Businessは9月24日、カーボン・プライシング(炭素価格付け)制度に関する政府や企業、投資家らの対話の質を向上させ、効果的なカーボン・プライシングの実現を支援するためのツールキット、"The Carbon Pricing Pathways Toolkit"を公開した。
同ツールキットは、世界のCO2排出量を削減し、脱炭素化に向けた新技術のイノベーションを促進し、各国にクリーンエネルギーへの移行インセンティブを提供する上で必要かつ適正となる炭素価格水準に関する知見を提供するものだ。
カーボン・プライシングは脱炭素社会の実現に向けてグローバル経済の構造的な変化を促すための重要な政策フレームワークの一部だという認識は既に多くの政策立案者や企業、政府指導者らの間で一致しているものの、現状では多くの国が効果的な炭素価格制度を構築できていないのが現状だ。
その一因はカーボン・プライシング制度が内包する複雑性にある。国際合意と国内法との整合や、規制と産業界主導の取り組みとの相互作用、炭素税とキャップ・アンド・トレード制度との関係など様々な要因を考慮する必要があるうえ、現状の不透明な市場環境や政府のCO2排出削減に向けたコミットメントの曖昧性を考慮すると、将来の炭素価格を適切な形で設定するのは非常に困難が伴う。
今回CDPらが公表したツールキットは、それらの課題を乗り越え、地球の気温上昇を2℃未満に抑える上で必要となる炭素価格水準とタイムフレームに焦点をあてて関係者間のより質の高い対話を促すことを目的として作られている。
同ツールキットは、低炭素経済に向けた理想的な道筋として国内の取り組みと国際的な取り組みを均衡させる補完的な気候変動政策パッケージの重要性を挙げており、その道筋の中心に、時間軸に沿った段階的な炭素価格水準の設定を含む強固な枠組みを据えている。
具体的には、カーボン・プライシング制度の導入、運用、移行の各段階において、異なる経済状況の国家がそれぞれ実行するべき炭素価格水準を提示しており、例えば「石炭からガスによる発電への移行を促すためにはどの程度の価格設定が必要か」といった議論を促すための具体的な価格レンジを提示している。
炭素価格制度が上手く機能するためには、低炭素化に向けた取り組みやイノベーションが各プレイヤーにとって経済インセンティブとなる状況を創り出す必要がある。その上で何より重要となるのが、いかに適切な炭素価格水準を設定するかという点だ。同ツールキットを参考に、各国にてより質の高い議論が行われることに期待したい。
【ツールキットダウンロード】The Carbon Pricing Pathways Toolkit
【参照リリース】CDP and We Mean Business Unveil Toolkit to Unlock Large-scale Decarbonization
【団体サイト】CDP
【団体サイト】We Mean Business
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