米ハーバード大学で開講されている「環境・サステナビリティ・マネジメント修士プログラム」。弊社サステナビリティ研究所所長の夫馬が在籍しているこちらのプログラムから、講義の中で紹介された興味深いコンテンツを時々お届けしていきます。今回の第1回では、今年12月に開催される予定の気候変動パリ会議に向けて熱を帯びる温室効果ガスをテーマに、米国政府が進めている地球規模のデータ観測・解析プロジェクトを紹介します。
地球規模で見た大気循環と気候変動
地球規模の大気循環。私たちの日々の生活や自然環境の変化が気候変動にどのように影響を与えているかは、地球規模で俯瞰して見てみると多くのことがわかってきます。そこで、初めにご紹介するのは、米国航空宇宙局NASAが進めているプロジェクトから、ゴダード宇宙飛行センターで進められているデータ解析の結果です。NASAでは、宇宙開発だけでなく、衛星から取得データで地球環境の変動を分析するというプロジェクトも実施しています。
こちらの動画は、NASAが実際に宇宙から収集した2006年8月から2007年4月までのデータを解析し、エアロゾル(大気中の微粒子)を色分けして示しています。青色は洋上から発生する塩分。緑色は燃焼反応による炭素。白色は化石燃料火力発電や火山から生じる硫黄。赤色は粉塵です。
動画からは、サハラ砂漠やゴビ砂漠から砂塵が気流によって高範囲に拡散されていく様子や、中国、インド、アメリカ東部、ヨーロッパ東部の火力発電所から硫黄(SOx)が撒き散らされている様子がはっきりと見て取れます。アフリカ中部の赤道地帯では森林火災により炭素が放出されている様子も確認されます。気候変動については、科学的な裏付けについて、データ取得や分析が常に困難なものとされてきました。現在アメリカでは、こうした宇宙からのデータをもとに、地球上で起きているマクロな環境の変化を観測できる仕組みが整備されつつあります。これにより、気候変動の要因やメカニズムがさらに明らかになっていくものと期待されています。
上昇する大気中の二酸化炭素濃度
温室効果ガスの約75%を占める二酸化炭素。世界の気候変動にはこの二酸化炭素濃度の上昇が大きな影響を与えると言われています。実際に二酸化炭素はどのぐらい上昇してきているのか。米国商務省海洋大気庁は地球上に複数の観測ポイントを置き、長期間のデータ収集を行うプロジェクト “CarbonTracker“を進めています。今回はその結果をまとめた動画をご紹介します。
こちらの動画は、1979年1月を基点とし、2014年1月までの二酸化炭素濃度の上昇を示すところから始まります。データ上の丸と、地図上の丸はそれぞれ観測ポイントを示しています。それぞれの観測ポイントで観測されたデータをつなげたものが左のグラフということです。右のグラフは観測ポイントの中でも、赤い点(ハワイのマウナ・ロア山)と青の点(南極)だけの時系列データをまとめたものです。夏と冬の周期性を保ったまま、どんどん二酸化炭素濃度が上昇していっています。
それから動画は、どんどん歴史を遡っていきます。産業革命前、先史時代、さらに紀元前80万年までの様子まで示してくれています。
二酸化炭素は氷河期時代よりも遥かに高く、産業革命後も一貫して上昇しており、さらに近年上昇率は高まっています。二酸化炭素濃度の測定は非常にコストのかかる大掛かりなものとなりますが、海洋大気庁の地球規模のデータ観測は科学的な根拠を与えてくれそうです。
夫馬 賢治
株式会社ニューラル サステナビリティ研究所所長
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