大気汚染や気候変動などの環境問題がますます切迫した社会課題となりつつある中国では、政府の支援策や民間需要の高まりを受けて、環境に配慮した建造物「グリーンビルディング」の普及が急速に進んでいる。
現在、中国ではグリーンビルディングの評価・認証システムとして、中国政府によるGreen Building Evaluation Standard(GBES)認証と米国グリーンビルディング評議会(USGBC)が運営するLEED認証の二つが存在している。中国では2015年4月時点で合計3億2千万平米ものスペースがこれらのシステムの認証を受けており、GBES認証が開始した2008年と比較すると、その総面積は154倍にも拡大している。
米不動産大手のCBREグループが先日公表したホワイトペーパー、"New Era of China’s Green Buildings"によると、北京と上海のグリーンビルディング認証面積はそれぞれ約2000万平米へと拡大しており、中国の二大グリーンビルディング推進都市となっている。また、両都市は世界のグリーンビルディング推進都市ランキングの中においても米シカゴやニューヨーク、ワシントンなど他の主要都市を上回っており、他にも深圳や武漢などの都市も世界上位10位にランクインしている。
また、同報告書によると、特にグリーンビルディングが初期に広まった北京や上海、深圳などの都市では、既にグリーンビルディングによる経済的利益が上がっているという。グリーンビルディングは賃貸料や利用率の面で優位性が示されており、それらの都市においてLEED認証のA判定を受けたオフィスビルの賃貸料は、そうでないオフィスビルと比較して1.5%~25.7%のプレミアがついているとのことだ。また、LEED認証を受けたプロジェクトは市場が低迷している際でもより回復が早いことが証明されていると指摘している。
さらに、同報告書はグリーンビルディング認証により発生するコストは一般的に認識されているほど高くない点にも触れている。例えば、GBES認証のプロジェクトはそうでないプロジェクトと比較してコストは0.8~6.1%のアップに留まっているとのことだ。
このような状況を受け、CRBEは今後のグリーンテクノロジーの更なる発展や高まる需要、政府の支援策などを考慮すると、中国におけるグリーンビルディングは真に投資効率が高く、将来性の大きい市場だとしている。
一方で、グリーンビルディングの普及状況を一人あたり面積という指標で見てみると、中国は未だ米国にはるか及ばない状況だ。CBREによると、中国の都市では一人当たり1.31平米のグリーンスペースを持つ深圳が一番となっているものの、世界全体では深圳も20位に留まっているという。こうした状況も考えると、中国のグリーンビルディング市場にはまだまだ伸びる余地があることがよく分かる。
米国に次ぎ世界第二位の経済大国となった中国は、かつての工業大国から環境大国へとそのイメージを変えつつある。
【参照リリース】China’s Green Building Development Goes on Fast Tracks; Beijing and Shanghai Surpass Major Cities in Green Space Rollout
【企業サイト】CBRE Group
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